Snow Dream 4th (ページ30)

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最悪なファーストキス。ページ30

あの後、みんなは元気をなくした様子だったけど、撮影は滞りなく終わり帰路につく。

終電間際の電車は、思った以上に満員で久々に電車を使ったことを後悔するレベルだった。

特に金曜だからなのか酔っ払いだと思しき人が散見され、車内はアルコール臭が強く漂っていた。

「…気持ち悪くなってきちゃった…」

臭いにやられたのか、酔ってしまい、口元に手を当てる。

そうしながら思い出される今日の話題。

私のファーストキス。

それは最悪の思い出だ。

【次は～○○～○○です】

車内アナウンスで目的の駅の放送が流れる。

しばらくして駅に停まり、私はようやく解放された。

「…久しぶり」

見慣れたはずの構内は深夜ということもあってか閑散としてる。

「あの日みたい」

閑散とした駅構内と、今日聞いたファーストキスのワードが私を昔へとトリップさせる。

あぁ、できることならば忘れたいのに。

できれば、思い出したくなんかなかったのに。――――

―――それは、私がJrになって2年目の夏のレッスン終わり。

まだ幼い私はレッスン後にそそくさとレッスン場を出ようとした。

しかし、ビルを出た瞬間、先輩であり、自称”私の味方”である先輩に呼び止められた。

「送っていくよ」

彼はそういって私の腕をつかんだかと思うと、さっさと駅方面へと歩き出した。

なにも珍しいことではない。

少し前からあることを条件に私の味方、をしてくれている先輩。

そして、先輩の都合次第でこういう風に送ってくれるようになっていた。

正直あんまりその先輩のことは好きではなかったけれど自分を守るにはしかたないと自分に言い聞かせていた。

そして、私の家の最寄り駅についたとき。

「ありがとうございました」

いつもはここでもう2駅先を目指す先輩とはさよならをする。

しかし、その日は違った。

「家まで送る。」

先輩はなぜか、そういって電車を降りた。

当時、私は親戚の家に居候しており、その最寄り駅はいつでも閑散としているような場所だった。

「え、大丈夫です」

「送る。」

強引にそういうと、断っているうちに電車のドアが閉まってしまった。

電車が出発してしまえば一層閑散とし、駅構内には私たちしかいない状態になった。

「…なぁ。」

「なんですか？」

先輩の方へと顔を向けると、一気に詰められる距離。

「えっ」

とっさに私は顔をそむけた。

「こっち向いて」

「なんでですか？」

「キスさせて」

「え」