Snow Dream 4th (ページ12)

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好きとは言わないで。ページ12

少年倶楽部の収録に参加したあと、廊下で慎太郎とすれ違う。

「あ、慎ちゃん」

森「Aじゃん。」

おう、なんて挨拶してくれる慎ちゃん。

「やっほ。元気？」

なんて彼と並べば、いつの間にこんなに大男になったんだろうと思いながらも昔、いっしょにいた彼の面影を思い出す。

森「元気だよ。Aは？」

「ぼちぼちだね」

森「事故、大変だったな。」

「んーまぁね。」

よしよしなんて声にしながら私の頭をくしゃくしゃにしていく慎ちゃん。

そんな彼のしぐさに、また彼の面影を思い出して一言だけずっと聞きたかったことを声にしかけてまた飲み込んだ。

森「なんか、お前今日歯切れ悪くね？」

「そう？いつも通りだよ。」

ただひたすらに慎太郎の道を行く彼に、その彼のことは聞けなくて。

思い出した面影を振り払うように首を振る。

森「あいつも元気だよ。」

何かを察したようにそういう慎ちゃん。

「…え？」

森「この前、Aに会ったら伝えてって。」

「龍、？」

森「ほかに誰がいんの」

複雑そうな顔で、笑う慎ちゃん。

「…うん。」

森「…それから、ごめんなって言ってた。なんのことか知らないけど。」

「そっか」

彼が事務所を去ったあの日、私たちは一生、会わないと約束した。

それが、お互いのためだと彼が言うから。

でもね、今ではちゃんとわかってる。

それは私のためだったんだって。

「じゃぁ、龍に伝えて。一生許さないって」

森「え？」

「私と別れたこと、一生後悔してろってね」

１度も伝えられなかった”好き”の言葉は私の心の奥底にまだ眠っている。

それが恋だったのかはいまだにわからない。

それでも私は彼を好きだった。

交わらない”好き”は…

言わずに身体で語られるその言葉は。

ただお互いの心を蝕むだけだったね。

森「え、待って、Aって付き合って」

「付き合ってないよ。」

森「え、どういうこと？」

「そういうこと。」

森「え。まじでパニックなんだけど。」

「慎ちゃんごめんね」

森「いや、俺は…」

「でも、龍とはもう二度と会わないつもりだから、最後にこれだけ伝えてね。」

森「…わかった」

それ以上なにも聞かずに言葉を飲み込む慎ちゃん。

誰も知らない秘密だったけれど。

察して動ける彼ならきっと誰にも言わないだろうと信じてる。

「今度ご飯でもいこっかー」

森「Aのおごりならいいよ」

「えー？」

２人で楽屋まで歩く。

それ以降は、彼には触れないで。