十二話 識字 ページ13
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部屋を出る下女は皆んな小柄な下女ばかりだった。
更に、そばかすと前髪が長い目立つ風貌をしている事により、私も猫小姐も気が付いた。
彼女たちが書き物を見て何の反応も示さなかったのは、それが読めないからだろう。
あの書き物は私達だけを指していたものでは無かった。いわば、ふるいだ。
「不思議だ。話に聞くと君達は字は読めないとか」
わざとらしく美しい宦官は言った。
『はい、卑賤の生まれでございまして...』
「何かの間違いでしょう」
『「(誰が教えるもんか!)」』
とは、口が裂けても言わない。
もはや、しらばっくれ気満々である。
『(ちょっと言葉遣い違うかな?いやでも本当に卑しい生まれだからしょうがない無い、か)』
文字が読める、読めないで下女の扱いは違う。
読める方は読める方で、読めない方は読めない方で役に立つのであるが、無知の方が都合が良い。
美しい宦官は壬氏と言った。
虫も殺さないような優美な笑みなのになにやら蠢くものを感じる。怖っ。
でなければ普段冷静沈着な猫小姐を窮地に立たせることは出来ないだろう。
《黙ってついてこい》
壬氏はそう言った。そして、今に至る。
断れば首が飛ぶ。確実に。
使い捨ての端女に出来る事なんて素直についていく事だけだ。
「(どううまく対処しよう)」
『(なにが起こるんだろう...楽しみだなあ)』
こうして壬氏につれていかれる理由が思い当たらないわけではなかった。
だが、どうしてそれがばれたのか不思議だ。
__妃に文を送った事だろうか。
わざとらしく、壬氏の手には布きれがあった。
それには、汚くたどたどしい文字が書いてあるだろう。
玉葉妃の元へ文を置いたのは猫小姐だ。
周りを確認して置いた筈だろうが、誰かに見られたのだろうか。そこで見た者が密告したのだろう。
『(そして、前髪の長い女とそばかすの女を目星に付けた。それなら、何故私まで?)』
まず、先に文字が書ける者を集め、筆跡を集める。字というものは崩して書いても癖が残るもの。
その中に適合者がいなければ読める者。判断の仕方は先程の通りである。
『(なんて疑い深いんだろう。この宦官)』
「(ってか暇人過ぎるだろ)」
私と猫小姐は心の中で悪態をついた。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (12月14日 1時) (レス) @page34 id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - オチは出来たら愛されエンドか全員のオチが見たいです!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (10月24日 17時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
カケオレ - 続き待ってます!更新頑張ってください! (2022年7月3日 18時) (レス) @page34 id: 661d0ebc5d (このIDを非表示/違反報告)
akane0731akane(プロフ) - 面白です!更新待ってます! (2020年4月14日 22時) (レス) id: 4d9b400674 (このIDを非表示/違反報告)
水無月胡桃(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!!励みになります! (2020年1月30日 16時) (レス) id: 1710749122 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水霧 | 作成日時:2019年11月30日 17時