十一話 居残り ページ12
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絹糸のような髪、流れるような輪郭。
切れ長の目と柳のような眉を持っている。
絵巻物の天女もこれ程美しくはあるまい。
『「(もったいないなあ)」』
頰を染める事無く思ったのがそんな言葉。
後宮内にいる男性は皆、生殖機能を失っている宦官だ。つまり、子をなせない。
あの男の子であれば、どれほど鑑賞に優れた子が生まれるのだろうか。ああ、もったいない。
『いやでも、あれだけ人間離れした美貌なら帝だって籠絡することも出来るんじゃないかなあ?』
「不届き。気持ちは、わからなくもないが」
男は流れるように立ち上がると、机に向かい、筆をとると優美な動きで何かをさらさらと書く。
にっこりと甘露のよつな笑みを浮かべ、
男は書き物を見せた。
それを見た猫小姐と私は、呼吸の仕方を忘れるほど、驚き、固まった。
【そこのそばかすの女と前髪の女___】
『(おまえらは、居残りだあ!?)』
要約すればそんな事が書いてあった。
こういう時こそ姉譲りの動かない表情筋に感謝するが、あまりの驚きに一瞬、眉が動いてしまった。
私達の動きを見逃さなかったのだろう。男は天女のような笑みを浮かべ、こちらを見ている。
そして、男は書き物をしまうと、手を叩いた。
「今日はこれで解散だ。部屋に戻っていいぞ」
下女たちはいぶかしみながら、後ろ髪をひかれながらも部屋を出ていった。
_あの書き物が何を意味しているのか知らないまま。
『猫小姐。出た方がいい』
「そ、そうだね」
他の下女とともに部屋を出ようとすると、私と猫小姐の肩に手ががっしりと食い込んでいた。
恐る恐る振り向くと、天女の笑みがそこにはある。
「だめじゃないか。君たちは居残りだよね?」
有無を言わさない、極上の笑みだった。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (12月14日 1時) (レス) @page34 id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - オチは出来たら愛されエンドか全員のオチが見たいです!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (10月24日 17時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
カケオレ - 続き待ってます!更新頑張ってください! (2022年7月3日 18時) (レス) @page34 id: 661d0ebc5d (このIDを非表示/違反報告)
akane0731akane(プロフ) - 面白です!更新待ってます! (2020年4月14日 22時) (レス) id: 4d9b400674 (このIDを非表示/違反報告)
水無月胡桃(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!!励みになります! (2020年1月30日 16時) (レス) id: 1710749122 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水霧 | 作成日時:2019年11月30日 17時