薬屋と妓楼の少女 (ページ11)

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十話呼び出しページ11

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『呼び出し、ですか？』

洗濯籠を抱えた私は宦官に呼び止められた。

中央にある宮官長の部屋に来いとのこと。

宮官とは、後宮を大きく分ける三部門の１つであり、下位に位置する女官のことを言う。

『(確か妃は内官、宦官は内侍省に当たるとか)』

宦官は他の下女にも話しかけている。

籠を部屋の前に置くと、丁度猫小姐が近くを通った。私と同じで、宦官に呼び出されたらしい。

「どうやら自分達だけじゃ無いらしいね」

『何の用だろう？』

「人手が足りないんでしょ。行こう」

宮官長の棟は後宮と外部を繋ぐ四門のうち正門のそばにある。帝が高級を訪れる際必ず通るのだ。

『(呼び出されたとはいえ、気乗りしないなあ)』

隣の内官長の棟に幾分劣るものの、中級妃の棟よりも豪奢な造りである。

促されるまま部屋の中に入ると、大きな机が１つあるだけで思ったより殺風景だった。

中には私達意外にも下女が十人ほど集まっており、さまざまな表情を浮かべていた。

『(不安、期待___なんで興奮してるんだ？)』

「はい、ここまで。お前らは帰って良いぞ」

『(あれ？)』

「(随分不自然な所で区切られたな)」

猫小姐と私だけ部屋に入り、残りの下女はいぶかしげに仕事へと帰っていった。

『(定員、というにはまだ広いようだけど)』

猫小姐も不思議そうに部屋の中を見回している。

私と猫小姐は、やがて侍女たちの視線が１つに集まっていることに気づいた。

部屋の隅に目立たぬように座る女性と、それに仕える宦官、少し離れて年嵩のいった女性がいる。

『(確か中年の方は宮官長だと思うんだけど..)』

それよりも偉そうな女性は何なのだろう。

『(あれ？？？)』

女性にしては肩幅が広く、簡素な服を着ている。髪を巾でまとめ、残りを下ろしている。

『(男なのか？)』

「(男か)」

天女のような柔らかい笑みを浮かべ、女官たちを見ている。宮官長がとしがいもなく赤くなっていた。

『(なるほど、皆んなが顔を染めるわけだ)』

噂に聞いていた美しい宦官。それは彼の事だと、一目見て気づいた。

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