薬屋と妓楼の少女 (ページ31)

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三十話記憶ページ31

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「とりあえず効力はわかった」

壬氏は呆れた顔で私に言った。

「私もです。____A」

『はい...』

壬氏は、目の前の惨状に半ば放心していた。

「ああ、そうだな」

いつもの輝いた笑みではなく、ただ疲れた顔をしている。猫小姐も、眉間に皺が寄っていた。

「どうしてこうなったんだ」

『実はですね...』

それは、数時前にさかのぼる。

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届けられた可可阿は、種子のままではなく粉末になったものだった。手際が良いようだ。

他に材料として猫小姐が頼んだものは全て翡翠宮の台所に運び込まれている。

『牛乳、乳酪、砂糖、蜂蜜、蒸留酒。これは？』

「乾燥した果実に、匂いつけの香草油」

『うわー...全部強壮剤の材料』

猫小姐と私は一度だけ可可阿を食べた事がある。

粉を練って砂糖を混ぜ固めたもので、巧克力(チョコレート)とくれた妓女は言っていた。

指先ほどの欠片だったが、食べると、きつめの蒸留酒を飲み干した気分になり、気持ちがふわついた。

「....あら？猫猫？A？」

「........」ぽやぁ～～

『小姐...もっとぉ...』

「猫猫！？A！？しっかり！！！」

邪な客が売れっ子妓女の関心を買う為に、珍しい菓子だと言って渡したものである。

「なんて物渡してんのよ！」

「もう二度と来るな！！出禁だよ！！」

残念なことに、様子の違う私達を見て妓女は怒り、
その客はやり手婆に出禁を食らったらしい。

のちに、それが交易商売が売り出していた事がわかった。

『(その後にも何回か種子を手に入れたけど、おやじさんや猫小姐は薬には使ってなかったな、)』

花街の薬屋にそんな高級品など無縁だったようだ。

『記憶の中では、油脂で固めてた気がする』

「...やっぱ料理作る時はAだよな」

薬や毒物の知識を溜め込んでいる猫小姐は、食に関する記憶も鮮明になっている。

それと同時に、遊郭で客に出す強壮料理の手伝いをしていた私の料理の知識はきっと、猫小姐を上回ると思う。

『「(さぁ、媚. 薬作り開始だ！！)」』