二十八話 呆れ ページ29
.
医官に比べて宦官は丁寧な動きで私達を案内する。
『(まるで主人に接する態度のようだな)』
そこは、三方を薬棚で囲い込まれた部屋だった。
真ん中に調合用の机、つぼや、棚の中や上ににまで、見た事の無い薬草で溢れかえっていた。
「ほぅ....」
猫小姐が感嘆の声を漏らす。
呆れて隣を見れば、猫小姐はおそらく後宮に来て一番の笑みを浮かべていた。
頰は赤く染まり、眼は潤み、一文字だった唇が柔らかく薄い弧を描いている。
宦官は驚いた表情で猫小姐を見ていた。
『(いつもその顔でいれば良いのに...)』
他人は勿論、身内にさえ口数が多いとは言えない我が姐は薬になるとこうも変わるのか。
呆れる。毎度のことだが、呆れるしかない。
「ぐへへぇ...」
『(こうなると手がつけられない)』
猫小姐は引き出しの見出しを眺め、珍しい薬を見つけるなり踊るような奇妙な動きをしている。
あんな形でも踊れるなら踊りたいものだ。
「〜〜〜〜〜」
困惑はしないが、これを始めてみる宦官と医官には多少の同情くらいする。
「おい。あれはなにかの呪いか、なにかか?」
『御機嫌よう。壬氏さま』
「いや、質問に答えてくれ」
そろそろ止めようか、と思い出した時、いつのまにか背後に壬氏が立っていた。
彼は奇異の目で猫小姐を見ていた。
.
313人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (12月14日 1時) (レス) @page34 id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん(旧もこ)(プロフ) - オチは出来たら愛されエンドか全員のオチが見たいです!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (10月24日 17時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
カケオレ - 続き待ってます!更新頑張ってください! (2022年7月3日 18時) (レス) @page34 id: 661d0ebc5d (このIDを非表示/違反報告)
akane0731akane(プロフ) - 面白です!更新待ってます! (2020年4月14日 22時) (レス) id: 4d9b400674 (このIDを非表示/違反報告)
水無月胡桃(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!!励みになります! (2020年1月30日 16時) (レス) id: 1710749122 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:水霧 | 作成日時:2019年11月30日 17時