薬屋と妓楼の少女 (ページ3)

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二話後宮ページ3

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建物の奥は表とは違いとても殺風景である。

簡素な中庭には石畳の水場があり、男とも女ともつかない召使い達が大量の洗濯物を洗っていた。

「後宮」とは宮廷の中に区分されている。

__その役割は帝の子を成すための女の園。

後宮は基本、男子禁制だ。

入れるのはこの国で最も高貴な方とその血縁。

あとは「宦官」と呼ばれる大事なものを失った元男性だけである。もちろん、ここにいるのは後者。

『毎度思うんだけどいびつだよねえ』

「それが理にかなっているのなら問題ない」

『現実的なお考えだこと』

猫小姐と共に持ってきた籠を置くと、そばの建物の中にある並べられた籠を見る。

汚れ物では無く、日に当たった洗濯済みの着物。これに袖を通す妃は、どれほど美しいのだろうか。

持ち手にかけられは木札を見ると、植物を模した絵と数字が書かれていた。下級妃のものだろう。

『猫小姐の洗濯物はどの妃様のもの？』

「下級妃様。多分、同じ妃様」

『なら一緒に行こ』

私達女官には文字が読めない者もいる。実際、識字率は田舎の娘で五割越せばいい方なのだ。

私も猫小姐も仕事中に「これをどこに持っていけば良い？」と片手で数えられないほど尋ねられた。

『量は増えたが質が悪いって所かな』

「何が？薬草のこと？」

『んー、後宮の話』

「流石に三千人の大所帯ともなればそうなるよ」

猫小姐と私はその大所帯の中でも最下層の下女。所詮数合わせが妥当なところだ。

牡丹のような豊満な肉体や、満月のように白い肌、絹のように美しい髪でも持っていれば、下級妃嬪の位につける可能性でもあったのだが、

『結局は、見た目の話か』

「A、あんた妃になりたいの？」

『勘弁。妓女の方がよっぽど良い』

私が持つのは健康な肌と枯れ枝のような手足、猫小姐がもつのはそばなすの浮いた肌と肉無しの身体。

(早く仕事を終わらせて寝よう)

私達は帝の寵愛などには蟻ほどの興味もない。

猫小姐が小走りにやったので、私もそれに続いて後宮内の廊下を走っていった。

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