25 権力 ページ9
次の日。
今日も絵を売ろうと、家で絵を売り出す準備をしていると、私のスマホが音を出して震えた。
誰からだろうと思い手に取るが、そこには知らない電話番号が表示されていた。
私は取り敢えず電話に出る。
すると、スマホからは私が1番聞きたくない声が響いてきた。
「もしもし、A？久しぶりやねぇ。」
頭の中にガンガンと響く、母の声。
いや、この人はもう私の母親ではない。ただの他人。
「なんで、私の電話番号知ってるの…。」
「ふふ、そんなの簡単に分かるわいね。それより、あんたに話したいことがあるんや。」
私はこの人の声が聞きたくなくて通話を切ろうとする。
しかし、次の言葉で私の手は止まった。
「あんたの結婚相手、私が決めてあげるさかいね。」
私はその言葉に、怒りが抑えきれなかった。
「は？…何言ってんの？」
すると、この人は1拍置いていった。
「あんた、実の母親に向かってなんて口の利き方やの？」
「あんたなんか私の母親じゃない！」
「何を言っとるん、血も繋がっとるしあんたのへその緒やってあるんやよ？」
「そういう問題じゃ…！」
「とにかく！今週の日曜日、お見合いをしてもらうさかい。西橋銀行さんの次男さんや、あんたと結婚すれば、この家を継いでくれるって言ってくれてはるんや。まぁ、詳しいことはあんたが来てから直接話します。」
「私が行くわけないでしょ！？」
「土曜日に手伝いの雪を行かせるさかい。」
そう口早に済ませると、気づいた時にはもう電話は切れていた。
「そんな…、嘘でしょ…。」
私は床に座り込んだ。
この会話からも見て取れるように、私と母は仲が悪い。
いや、仲が悪いだけじゃなく、絶交している関係なのだ。
もちろん母だけではなく、父とも。
私は、京都の着物屋を営んでいる飛鳥家の人間だった。
家もかなり大きくて、お金には困らない生活をしてきた。
本当は私もレトルトくんと同じ関西人、だけど、京都弁を使うとなんだかあの人のことを思い出して嫌だった。
だから私は無理やり言葉を標準語にした。
だけど、レトルトくんのなまりは何一つとして苦には感じられなかった。
むしろ暖かい気持ちになる。
そして、私は一人っ子で、この着物屋を継ぐのは私だけ。
だけど、私はこの家を継ぐのは嫌だった。
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作者名：シーチキン | 作成日時：2021年3月31日 17時
