32 お見合い ページ27
次の日、遂にお見合いの日がやって来た。
私は朝早くから身なりが整えられ、お座敷の座布団の上に座らされた。
その他にも私の両脇に2つ、前に3つ座布団が置かれている。
私がこの部屋で1人にされて数分。
私の父だった人と母だった人が入ってくる。
父だった人の顔を見るのは何年ぶりだろうか、何十年と経つのかもしれない。
私が子供の時はもちろん、出ていくと言った時も父は私をほったらかしだった。
「この家を出ていくと言った奴は、もうこの家の奴じゃない。」と母だった人から父だった人の言葉を伝えられたことをよく覚えている。
そして、父だった人と母だった人も座ってから数分。
遂に相手の家族が入ってきた。
龍彦さんという人は、思ったより背が高く、体つきもしっかりしていてモテそうな見た目だった。
相手の家族が入ってくると、母だった人が口を開く。
「今日はどうもお越しいただきありがとうございます。」
頭を下げながらそう言うと、相手の父親が声を上げる。
「いえ、こちらこそお時間を設けて下さりありがとうございます。」
「いえいえ、どうぞお座り下さい。」
「どうも。」
そして、相手の家族が小さく礼をしながら座布団に座っていく。
すると、お手伝いの人達が、豪華な食事を次々と運んでくる。
運び終わると、早速龍彦さんが口を開いた。
「今日は本当にお時間を設けて下さりありがとうございます。私、西橋 龍彦と申します。」
龍彦さんはそう言って頭を下げる。
私はこの堅苦しさが嫌だった。
何故恋愛をするためにこんな堅苦しく居心地の悪い空間に居なければならないのか。
だが、そう思うも、礼儀正しくいないとダメなので、私も頭を下げながら言う。
「私は、飛鳥 Aと申します。今日はおいで下さってありがとうございます。」
礼をした後、少しの沈黙が流れ、龍彦さんが口を開いた。
「Aさんにはいきなりで、迷惑かも知れませんが、僕は、Aさんに惹かれてしまいました。」
私はその言葉を聞いて、少しびっくりする。
この男、意外と積極的な男だ。
いきなりお見合いで告白の言葉を述べる奴はなかなかいないだろう。
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作者名：シーチキン | 作成日時：2021年3月31日 17時
