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「す、すいません、この絵、ください。」
俺が指さした絵は、完璧なようで完璧じゃない、どこか幼く可愛らしい絵だった。
彼女は俺を見上げると、配達員の時の彼女とは別人のように値段を伝えた。
俺は、言われた金額を払い、絵を受け取る。
だけど、このままじゃ気が済まないと思って、俺は人生で最大の勇気を振り絞った。
「あの、えっと、この前の配達員の方ですよね。」
「えっ・・・?」
彼女は、とても驚いた表情をした後、答えた。
「あ、はい、そうです。」
俺はその答えを聞いて、ふぅーっと力が抜けた。
本当に人違いじゃなくて良かった。
だけど、2回しか会ったことがないのに覚えていたら不審がられるかなと思って、俺は頑張って言葉を発する。
「あ、やっぱり、いやえっと、だからってどうって事ないんですけど・・・、」
詰まり詰まり話していると、彼女は急に頭を下げて言った。
「あ、あの時は、固まっちゃったり、嫌悪感を抱かせるようなことしてすみませんでした!」
彼女が頭を下げるその姿は、配達員の時の彼女だった。
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作者名:シーチキン | 作成日時:2021年3月11日 12時