・ ページ3
こんなに大きなマンションに入ったことがない私は、中に入るだけでも緊張してしまった。
そして、部屋番号を間違えないように何回も確認してからインターホンを鳴らす。
30秒くらいが経って玄関の扉が開く。
そこで現れたのは、マスクを着けた若い男の人だった。
さっきと同じようにサインを貰って注文品を渡すだけなのに、私はその場で固まってしまった。
どこか、その人に見覚えがあったのだ。
私はハッと我に返ると、急いでボールペンを渡した。
「あっ、すみません!サインをお願いします。」
私がそう言うと、その人は「大丈夫ですよ。」と優しく言った。
その優しい声は私の胸をすーっと通り過ぎていく。
どこかで聞いたことのある落ち着く声・・・。
サインを貰うと、注文品を渡して私はマンションを出た。
そして、気づけば車の中だった。
ぼーっとした頭から、だんだん現実に戻ってくる。
そこで、私は今の自分の行動の恐ろしさに気づいた。
(あぁ!どうしよう、どうしよう!なんか自分の世界入ってさっきの人の事見つめちゃったよ!絶対変な人って思われてるよね!?うわーっ最悪だぁー!)
頭をぐしゃぐしゃと掻きむしると、一旦今あったことは忘れて仕事に専念することにした。
そして、バイトが終わって、家で寝る時間になると先程の事を思い出して、また頭を掻きむしるのだった。
17人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シーチキン | 作成日時:2021年3月11日 12時