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「..................A」
せめてもの抵抗で、唇を噛み目を伏せている私の名前を呼ぶ、彼の声がはっきりと聞こえた。
そして、トン、と。耳元で音もない感触。
それと同時に、私の肩の辺りに温かい重みを感じて。
恐る恐る目線を上げて重みを感じた方、つまり右肩に目に向ければ、綺麗な白髪が視界に広がる。
少し揺れて葛葉の髪の、柔らかさを感じた。
肩に頭を置かれて、そして葛葉の両腕を私の背後から回されている状態で。私は一歩も動けずに、されるがままだった。
『______く、ずは?』
ふと、名前を呼び掛けるも何も反応はない。
もしかして.......いや、そんな事。
ある訳ない、とは言い切れない。でも決して彼は決して、人前で涙を流すことはないのだ。滅多にないとも言える。
だから一瞬脳裏を掠めた、飽く迄も勘に過ぎない考えを掻き消して。ゆっくり、重い口を開いた。
『わたし、帰りたいから離してほし____、』
「無理」
離してほしい。そこまで私が言い切る前に、葛葉はたったのひと言で、私の声を遮った。一刀両断。気持ちいいくらいの即答だ。
視線は交わらずに、続けて彼は口を開く。
" _______ "
そう、私に囁く様にひと言。ふた言。
この何とも言えない空気に、アルコールの匂いが滲んで鼻を擽った。
どくん、もう一度大きく心臓が鳴る。
先程の言葉が頭に残って、私を侵食しているみたいだった。
ああ、もう。
そんなこと言われたら、帰れないじゃん。馬鹿。
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空梅雨(プロフ) - ハルカさん» わざわざ教えて下さってありがとうございます‼︎読んできますね( * ॑¯ ॑*)ꔛ♥ (2022年10月11日 21時) (レス) id: a04b728654 (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - ねろち。さん» ねろち。様コメントありがとうございます....!!! あの、私もねろち。様の作品読んでます... 素敵なお話ばかりで、全部好きです… 更新楽しみにして下さって本当にありがとうございます🥹💕 (2022年10月11日 21時) (レス) id: a04b728654 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ - 空梅雨さん» 更新ありがとうございます!!たすかるたすかる自分も小説書いています!ハルカで作者検索したら『ハルカ【遼花】』という名前が出てくると思います。それが自分です!でも、空梅雨さんの方が素晴らしい作品ですよ!!! (2022年10月9日 22時) (レス) id: 900669addd (このIDを非表示/違反報告)
ねろち。(プロフ) - すごく ... すきです ... 🙏🙏文章の書き方とか心情の表し方がすごくすきです😭😭🙏次の更新も楽しみに待ってます💭 (2022年10月9日 18時) (レス) @page41 id: bb9a7b6c67 (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - ハルカさん» わわわ、夢主ちゃん好きと言って下さってありがとうございます😭ハルカさんも小説書かれてるんですか?是非読んでみたいです〜!参考になれるか分かりませんが、お言葉とても嬉しい限りです🙌✨応援ありがとうございます‼︎ (2022年10月9日 15時) (レス) id: a04b728654 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空梅雨 | 作成日時:2022年9月1日 20時