逃げただけでした。#1

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『離して、ほしい.......』




ドアノブを軽く握っている私の利き腕。

即ち右腕と反対側の左腕は、葛葉が掴んでいて。私がそう言っても、離してくれなかった。






「無理」

『なんで』

「逃げるから」


「これでお前が俺から逃げるの3回目だから」






なんで、と疑問をぶつけた私に即答した葛葉。そんな彼のことを、私は上手く直視出来ない。



葛葉の言う、3回目が今日のことなら。

きっと1回目が別れよう、と言ったあの日で、2回目はその翌日の私の住むマンション前でのことなんだろうと分かった。







『＿＿＿＿＿ごめん、』


「なんで、いつも俺から逃げるの」







＿＿＿＿＿＿＿＿そんなこと。言えるわけ、ないじゃん。

さっきまで熱を持っていた顔が段々と、すーっと冷めていく。
多分葛葉は私の腕を暫くは離してくれないんだろう、と察してドアノブから右手を下ろした。







「椎名達とはコラボするのに、俺としてくれないのもなんで」


『＿＿＿＿あ、』







そう葛葉に言われて、はっと気付く。


そうだ。今日誘われた、ゲマズ女子会のオフコラボは口約束で乗ったのに、葛葉とのコラボはもうずっと断ってる。

しかも二ヶ月前から。



一方の誘いは受けてもう一方は断るなんて。
私、活動者として以前に、人として最低なことをしてしまった。







『っごめん、しぃちゃん達とのコラボは断るつもりで、』


「別に断れって言ってるんじゃな＿＿＿」


『違くて、オフコラボは元々断るつもりだったから...！』







葛葉の言葉に覆い被さる様に、思わずそう口走ってしまう。




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