獲物 ページ8
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黙ってろ、と口を塞がれて、それで。
今、何が。訳も分からず、ラグーザ様は会場を後にします。
「っえ、ラグーザ様っ!?そのお方は、」
騎士の声が遠くで聞こえた気がします。
ですが私にはもう、抵抗する力など残っていませんでした。
バタン、と派手な音が響きます。
微かに滲む視界の中、天井の壁画が見え、ベッドに下ろされたことが分かりました。
ここは、ラグーザ様の自室でしょうか。
そしてあろう事か、私は主に押し倒されているのです。
「どこ触られた」
「っ」
「どこを触られたか、今すぐ言え」
その時初めて......初めて、私は主のことが怖いと感じました。私の本能に近い何かが、危険だと知らせています。
殺される、と思いました。
命を......その手に握られている、と。
そんな得体の知れない恐怖に打ちひしがれながら、必死に言葉を紡ぎます。
「いえ、どこもっ...!」
「嘘つくな」
「〜〜〜ッ!」
長く艶のかかった白髪が、表情に影を落とします。キリ、と一直線を描くように上げられた目元の核にある、真っ赤な瞳が私を睨みつけました。
「っ、本当にどこも触られておりませんので、」
「⋯⋯⋯⋯⋯チッ」
その綺麗な顔を歪ませて、舌打ちを一回。
歪んでも尚、美しい顔に目を奪われていれば、ラウスのボタンを上から順番に外されていきます。
「ら、ラグーザ様⋯⋯⋯何を、」
「─────消毒」
その一言で押し切られ、身にしていた服が段々と緩んでいってしまいます。露になってしまった首筋に生温かい感触がして、口から甘い嬌声がこぼれました。
カッと顔に、熱を集めます。
そんな私をよそに、首に鋭い痛みが走りました。
「んっ」
それは一度や二度ではなく、何度もです。
その度に吐息が漏れ、もう可笑しくなってしまいそうでした。
血を吸われている、と気付いたのは、ラグーザ様と目が合った時です。獲物を狩るようなその瞳に、心臓が一度大きく鳴りました。
「しばらく眠ってろ」
何かが唇に触れた感覚がして、それを最後に私は意識を失いました。
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空梅雨(プロフ) - あめさん» コメントありがとうございます…!本日やっとで更新しました、ご返信遅れてしまいすみません🙇🏻♀️❕励みになります、頑張ります! (2月25日 17時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
あめ - めちゃめちゃお話最高です…!!お話の続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2月20日 8時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)
髑髏(プロフ) - 空梅雨さん» いえいえ、こちらこそすぐに対応していただきありがとうございます。空梅雨様の執筆活動応援しております。更新楽しみにしております。 (2月17日 2時) (レス) id: cc975a844d (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - 髑髏さん» すみません、これ最初が逆になっておりました...!コメントありがとうございます、このまま気づかず完結までずっと間違えたままにしておいたと思うとゾッとします。とても助かりました🙇🏻♀️ (2月16日 23時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
髑髏(プロフ) - 気になった点がありましたのでコメント失礼致します。kzhのファーストネームはlgsの方ではなくalxの方です。空梅雨様の小説ではファーストネームとファミリーネームが逆で書かれているのはわざとでしょうか?語気が強くて申し訳ありません。 (2月16日 22時) (レス) id: cc975a844d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空梅雨 | 作成日時:2024年2月15日 17時