満月 ページ16
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「ふーん」
興味なさげな返事と共に、バサリと音がしたかと思えば、隣のアレクサンドル様が羽を広げているではありませんか。
「ア、アレクサンドル様！？」
「捕まっとけ」
そして何を思ったのか、私を抱き抱えたまま、器用にも片手で部屋の窓を開けます。ひゅーっと、微かに冷たい風が頬を撫でました。
「っえ、あああの、離して下さ、」
「舌噛み切るぞ」
うっと、言葉に詰まります。
為す術なく抱き抱えられたまま、身体が宙に浮きました。
体験したこともないような浮遊感に、全身の身の毛がよだちます。嗚呼、どうか無事でいられますように。
着いた先は、魔界のちょうど真ん中。
目印としてある、もう廃墟と化してしまった塔でした。
その塔の一番高い場所に身体を下ろされたところで、ようやく胸を撫で下ろすことが出来ました。
「ここ何もねえんだよな」
そう、つまらなそうに辺りを見回すアレクサンドル様を横目に、真上を見上げます。闇の中、満月が一際美しく光っていました。
「そうでしょうか」
その輝きに、目を奪われます。
「アレクサンドル様」
「ん、」
「月が..........月が、綺麗ですね」
＿＿＿＿＿＿月が綺麗ですね。
それは一昔前、人間界から伝わった表現で、私も何度か耳にしたことがありました。人間界で密かに使われている、愛の言葉を隠した隠語であると。
アレクサンドル様は、ご存知でしょうか。
人間界に長く滞在していたと聞くので、もしかしたらご存知なのかもしれません。いえ、ご存知ではないのが一番ですが。
この言葉を私が初めて耳にした時、とても素敵だと思いました。それと同時に、生涯一度も使うことのないだろうとも確信しました。
人間界は、魔界のように階級関係が殆どないところだと聞きます。素敵な場所なのでしょう。
そうですね。願わくば、アレクサンドル様がこの言葉の意味を知らないと良いのですが。
そう月に願いを込めたのが最後でした。
次の日から、私はアレクサンドル様の前から姿を消しました。
きっと、もう一生会うことは出来ないでしょう。
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空梅雨(プロフ) - あめさん» コメントありがとうございます…！本日やっとで更新しました、ご返信遅れてしまいすみません🙇🏻♀️❕励みになります、頑張ります！ (2月25日 17時) (
レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
あめ - めちゃめちゃお話最高です…！！お話の続き楽しみにしてます！頑張ってください！ (2月20日 8時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)
髑髏(プロフ) - 空梅雨さん» いえいえ、こちらこそすぐに対応していただきありがとうございます。空梅雨様の執筆活動応援しております。更新楽しみにしております。 (2月17日 2時) (レス) id: cc975a844d (このIDを非表示/違反報告)
空梅雨(プロフ) - 髑髏さん» すみません、これ最初が逆になっておりました...！コメントありがとうございます、このまま気づかず完結までずっと間違えたままにしておいたと思うとゾッとします。とても助かりました🙇🏻♀️ (2月16日 23時) (レス) id: 4ca18e6f9b (このIDを非表示/違反報告)
髑髏(プロフ) - 気になった点がありましたのでコメント失礼致します。kzhのファーストネームはlgsの方ではなくalxの方です。空梅雨様の小説ではファーストネームとファミリーネームが逆で書かれているのはわざとでしょうか？語気が強くて申し訳ありません。 (2月16日 22時) (レス) id: cc975a844d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空梅雨
| 作成日時：2024年2月15日 17時
