私がアイドルを辞める時【3】

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「私も、あの時は必死だったかも。最年長としてグループを引っ張っていかなきゃって思ってたし、守らなきゃって思ってたから」




デビューした頃はまだ未熟な私たちだった。
全員20歳にも満たなくて、窮屈な宿所に閉じ込められながら、毎日必死に踊って歌って。




「でも私達もデビュー1年目の時と比べたら仲良くなったよね」
「なりましたよね。4年前が嘘みたいです」




だよね、なんてお酒片手に笑い合う。
あの頃密かにファンの間で囁かれていた(3年目あたりで私達も知ることになる)不仲説が今じゃ笑い話だった。





「急に仲良くなってさ、プロデューサーもだけどCielのみんな困惑してたよね」

「何かあったんですか？って死ぬほど聞かれた気がします、私」

「ね、私も」

「お互いデビュー1周年の時の夜に仲良くなったんですよって何度も繰り返し言ったら、なんだかんだで信じてもらえましたよね」

「うわ、覚えてる。私が号泣しちゃった日でしょ？」

「それです」

「＿＿＿＿＿懐かしいね」





ですね、と言いかけたソユンの声を遮って、着信音が鳴る。

私からだった。画面に表示されていたのは、수린(スリン)。一度断りを入れて、部屋を出ようとした時。不意にソユンから声を掛けられた。





「まだ変えてないんですね」
「え？」
「それです」




指の先は、私の...スマホ？




「スマホカバーとスマホリング、オンニずっと変えてないじゃないですか。何か思い入れでもあるんですか？」

「うん、⋯⋯⋯⋯⋯⋯お揃いなの」




これが、唯一残されたmondoとの「お揃い」だった。だから、





「スリン？」
「Aオンニ！大変です！！」
「何かあったの？」



「今ネットで、Aオンニの熱愛疑惑が出て荒れてて⋯⋯⋯今どこに居ますか！？」

「え、熱愛？⋯⋯⋯ちょっと待って、誰と？」




「オンニと高校の同級生だったっていう、プロゲーマーの⋯⋯」
「mondoさん？って方です」





どうか、それを奪わないで欲しかった。





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