私がアイドルを辞める時【3】

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ファンミーティング終了後、一度段ボールに収納されたCiel達からの沢山のプレゼントの中から、mondoからのプレゼントを見つける。

何が入ってるんだろう。どきどきしつつ、丁寧に封を開けた。





「っ、」





目に入ったのは、ラッピング袋に包まれたハンカチだった。

小ぶりな白と、紫の花の刺繍。
ラッピング袋のリボンに通されたタグ。




『花をモチーフにしたハンカチ。刺繍された花はライラックをイメージしています。ライラックには「初恋」「青春の思い出」等の花言葉があり、甘くて優しい香りが魅力です。』





＿＿＿＿＿これって。





「買わないの」
「うーん、ちょっと厳しいかも」

「また来て買えばいいじゃん」
「そうだけど⋯⋯」





覚えてる。
あの時、初めてmondoと出掛けた時。の雑貨屋さんで、欲しいと思ったハンカチだった。じわりと、目頭が熱くなる。




「私がデビューした時mondoに買ってもらうおかな」





高校三年生の冬。確か私は、そう言った。

mondo、覚えていてくれたんだ。さっきは「はじめまして」なんて言ってたのに、インスタもフォローしてくれて、ファンミーティングにも足を運んでくれて。





「mondoの嘘つき」





ふふ、と小さく笑みがこぼれた。







そしてラッピング袋に入ったハンカチとは別に入っていたのは、小さなノートの切れ端だった。




＿＿＿＿＿＿" デビューおめでとう "




きっと試行錯誤して書いたのだろう。少し拙い日本語がそこには並んでいた。その下には小さくハングルが綴られている。




" 言うの遅くなってごめん "




「....................mondoのバカ」




遅いよ。私、もうデビューして5年が経っちゃったんだよ？



デビューおめでとう。その言葉を今まで何十回何百回と掛けられてきた。一年目は特に。

けれど一番言って欲しかった相手からは、一番傍で支えてくれた相手からは、ずっと聞けずじまいで。もう一生、聞けないかと思ってたのに。





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