私がアイドルを辞める時【3】

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「最上のライブで最高の満足をお届けする〈リムジンサービス〉」
「今日はL’AileのAさんが登場しました、お会いできて嬉しいです」

『こんにちは、L’AileのAです。よろしくお願いします』





まず最初にグループ曲を披露して、その後は自己紹介。
MCのイ・ムジンさんと談笑しながら、二曲目へと進んでいく。


この番組では最後のデュエット曲を除いて、ソロでは三曲を披露する予定だ。


順調に進んでいく中、二曲目も終わって最後の曲へと差し掛かった時だった。






「Aさんにとってこの曲はどんな曲ですか？」






ふと投げらかけられた言葉に、少しだけ頭を悩ませる。







『実は練習生だった時の月末評価の課題曲だったんです』

『恋愛曲を歌うことが慣れていなくて当時すごく苦労したのですが、今となっては大切な思い出で』






そうだ。あの時、デビューメンバーに選ばれる直前。
この曲を指定されて、中間発表ではよく分からない助言までされて。

mondoへの想いを自覚したのは、その後すぐのことだった。





「なるほど、そうなんですね」





でも気づいた時には遅かった。

運が良かったのか悪かったのか、この曲を披露した月末評価では過去最高の順位にまで上り詰めて、そのままデビューメンバーへと選ばれて。



それで、卒業を境に離れてしまった。






「それでは次のライブサービスを聞いてみましょう」





その一声で、耳に馴染んでしまったイントロが流れ始める。




異国語とはいえ、当時はあまりにもストレートな歌詞を口にするのにも戸惑ってたっけ。特にラストの「愛してる」とか。


今や何十万人、何百万人ものファンから、その言葉をかけられるようになって。そして最近だとワールドツアー中に、ずっとずっと会いたかったmondoから、言われた言葉だった。






“⋯⋯⋯⋯⋯⋯사랑해(サランへ)”






mondoは見てるかな。聞いているかな。

あの時、私たちが一年間過ごした教室で交わした言葉を思い出す。





「mondo、」
「なに」

「いつか私がアイドルを辞める時が来たら、その時は、」





その時は、どうかこの言葉が。
あの時口に出来なかったこの言葉が、言えますように。





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