私がアイドルを辞める時【3】

私の好きな人 (スリンside) ページ29

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どうして気づいてしまったんだろう。
ひとり、静まり返った部屋のベッドの上でそんなことを考えていた。





“⋯⋯⋯⋯ごめん、スリン”





あの人の元へと駆け出していく、オンニの背中を追いかけることは出来なかった。オンニはあの人と私という選択肢の中で、あの人を選んだんだ。







私にとってオンニは、誰よりも尊敬する人で、オンニの中で一番好きな人だった。




オンニの言葉ひとつで、私はいつも笑顔でいられた。どんなに落ち込んでいた時でも、オンニが居てくれたから立ち直れていた。

でもオンニの行動で、オンニの言葉で、こんなにも傷ついたのは初めてだった。






「⋯⋯⋯⋯⋯オンニ」





届かない声で呼ぶ。身体を丸め込んで、シーツにくるまった。

よくデビューした頃はオンニと同じベッドで寝ていた。
シングルサイズのベッドは、二人が寝るには決して広くはなかったのに、それでもオンニは文句一つ言わずに一緒に寝てくれた。



だけど今いるホテルの部屋のベッドは、心にぽっかりと空いた穴みたいに、私1人が寝るには広すぎる。






「“会いたい”」






どうして気づいちゃったんだろう。どうして、今。






“恋って......どんな感情でしたか？”


“そうだな、その人の行動や言葉ひとつで、嬉しくなったり悲しくなったりして”


“会えなかったら寂しくて泣きそうになる”






「⋯⋯⋯⋯⋯会いたいです、Aオンニ」





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