私がアイドルを辞める時【3】

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「⋯⋯⋯⋯⋯分かってる」

「分かってないだろ」




はあっとつかれた溜息が、まるで煙草の煙みたいに空気に溶けていく。それくらい分かってるよ、と小さく呟いた。

mondoに何をされてもいい覚悟で、ここに来たの。





「今すぐにでもキスするけど」

「いいよ、それでも」





は？

そんな声が聞こえてくるような、強い眼差しが向く。
逸らしちゃいけない気がして、私もmondoを見つめ返した。





「本気で言ってんのか」

「⋯⋯⋯⋯うん」





ここに来た時点で覚悟は決めていた。


もしmondoと一緒に居たことがバレたら、きっと私はもうアイドルではいられない。ここまでの努力だって、全部水の泡になるかもしれない。

それでも良かった。mondoに会いたかったから。





「アイドルになるから、俺とは付き合えないんじゃなかったけ」

「でも、今の私は⋯⋯⋯⋯アイドルじゃないよ」





最年長の、しっかり者の頼られる皆のオンニでもない。
どんな時でも求められる対応を欠かさないアイドルの私でもない。ネットで心無い声の標的になるアイドルの私でもない。

mondoと居る時は、ただのAAだから。





「そ」





素っ気ない返事にも思えた。
スルーされるのかと思っていたけどmondoは近づいてきて、
私に軽く触れるくらいのキスを落とした。




mondoとキスをするのは、これで二回目だった。
もう忘れてしまったあの時の唇の感触が、今はここに残っている。胸がいっぱいで、少しだけ泣きそうになった。





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