私がアイドルを辞める時【3】

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「じゃあ、おやすみなさい」



部屋に戻って、急いで汗だくの状態からシャワーを浴びる。

念入りにスキンケアを施した後はスマホを取り出して、今まで一度しかかけたことがなかった、11桁の番号をキーパッドに打ち込んだ。




昔、mondoに電話番号を聞かれたことがある。
でもその時はもう練習生で。異性との連絡先の交換が禁止だったから、断っていた。

だから私だけがmondoの電話番号を一方的に知っている。


＿＿＿＿＿＿繋がりますように。





「A？」




え。
スマホ越しに、いきなり名前が呼ばれたので少し驚く。電話口のせいか、やけに低い声が鼓膜を揺すった。




「mondo？」




ぎゅっとスマホを握って、久しぶりにその名前を呼んだ。電話越しの会話だけで、こんなにも胸が苦しい。





「あの、私の事覚えてる⋯？」
「覚えてる」
「そっか」





良かった。ほっと胸を撫で下ろした。
部屋の時計にちらりと目を移す。ちょうど日付が変わる頃だった。電話口に、「mondo」と呟く。





「そっち、行ってもいい？」
「..................意味分かってるのか」





もう子供じゃない。
もう私たちは、あの頃の高校生の私たちなんかじゃなかった。

成人した男女が同じ部屋にいるなんて、何があってもおかしくない。




「うん、分かってる」





それでも、mondoに会いたかった。
mondoと顔を合わせたかった。直接話がしたかった。

＿＿＿＿＿＿mondoに、何をされても良かった。






「⋯⋯⋯⋯好きにしろ」





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