私がアイドルを辞める時【3】

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「オンニ」




そしてその時の私は、オンニに対するこの感情の名前さえも知らなかった。ただ、お気に入りのおもちゃを取り上げられたような気分で。




「オンニは、まだ」
「まだその人が、好きなんですか？」




いやだ、いやだ。＿＿＿＿＿お願い、




「⋯⋯⋯⋯⋯⋯好きだよ」




違うって言って。











「話したらちょっと楽になったよ。聞いてくれてありがとう」




翌日。ワールドツアー前は練習の毎日で、疲れもあったのだろうか。そのまますぐに寝てしまったオンニが、朝一番に私に言った。

そして少しずつ、いつものオンニに戻りつつあった。
どこかダヒオンニやソユンもほっとしたような顔をしていた。



でもその代わりというように、オンニが調子を戻していくのと反比例するように、私が日々足を引っ張っていく。





「スリン、何かあった？」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯Aオンニ」





心配そうに、私の顔を覗くAオンニ。
デビュー時から、ううん、デビューメンバーに選ばれて一緒に練習をしていた時から、何も変わらないオンニ。





“スリンはさ、恋したことってある？”





あの夜の、オンニを思い出すといつも胸が苦しかった。
Aオンニが高校生の頃、好きになった人。今でも好きな人。





「大丈夫です」
「ほんとに...？無理だけはしないでね」





ひとつ、オンニの好きだった人について、心当たりがあった。

ワールドツアーが発表されて間もなくの頃、突然オンニの熱愛疑惑が出たことがあった。相手は、オンニの高校の時の同級生。確か名前は、





「⋯⋯⋯⋯⋯⋯“Mondo”」





パフォーマンス練習が終わった後。
宿所の一人部屋で数ヶ月前に出されたネット記事を漁れば、すぐに名前がヒットした。




本名は、나동훈(ナ・ドンフン)。今は日本発足のゲーミングチームに所属していて、ストリーマーとして活躍中。オンニと同じ高校出身。


スクロールを続ければ、次々に情報が目に飛び込んでくる。





もしかして。もしかして、この人がオンニの好きな人？





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