雨音2 ページ4
キヨside
彼女が持ってきたのはレモンティー。レモンの匂いが鼻を擽る。
キ「でも！」
俺は頼んでいないのだ。それにサービスと言ってもどうせ金を取るのだろう。
？「これは私からのサービスです。お客様に風邪は引いて欲しくありませんし、何かの縁ということで！あ、お代はいただきませんよ。」
正直、驚いた。ただ、雨宿りしてた男に普通ここまでするか？
キ「どうして、ここまでするんですか？」
？「ずっと、見てたんです。雨が降る前からずっと誰かを待っているのを。雨が降りだしても待っているので心配になりました。」
少し、引きつった顔で話出す。どうやら、見てたことに罪悪感があるらしい。
キ「そうだったんですか！？ありがとうございます。これ、いただきますね！」
？「はい！」
満面の笑みを浮かべ、返事をする彼女がとても素敵に見えた。だからだろう？こんな大胆なことが出来たのは
キ「あの！お名前なんて言うんですか？」
A「私…ですか？」
キ「す、すみません！気になって！嫌ですよね！」
俺がとっさにそう言うと彼女は手をブンブン振ってきた。
A「い、いえ！嫌じゃないですよ！私は諸橋 Aです。」
諸橋Aさんか…
キ「綺麗なお名前ですね。」
A「そうですか？ありがとうございます！」
彼女は照れながら俺に礼を言う。その仕草さえなんだがいとおしく思えて…
何、考えてるんだ！俺は！
A「お客様のお名前は何ですか？」
キ「え、あ！俺、清川って言います！清川拓哉です。」
上擦った声でなんとも情けない。
A「清川さんって言うんですね！」
キ「はい！あ、そうだ！タオルとかレモンティーとかありがとうございました！」
俺は飲み終わったコップを静かに置く。温かくて優しくて。
A「困ってるときはお互い様です！あと、これを。私はあるので。」
彼女が出してきたのは折り畳み傘。
キ「さ、さすがにそこまでは！」
雨が止んでることを願ってたがそんな簡単に止まないようで外はどしゃ降りだった。
A「ダメですよ！また、濡れちゃいます！はい、どうぞ！」
そう言って手に持たされた傘。ここまで来たら最後まで甘えてしまおう。
キ「あの、本当にすみません！必ず返すので！ありがとうございます！」
A「いえいえ、大丈夫ですよ！気を付けてくださいね、清川さん！」
彼女の綺麗な声を聞いてから俺はカフェから出たのだ。顔が熱いのはきっと気のせいだろう。
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作者名：RUI | 作成日時：2018年11月11日 17時
