脅. ページ3
…私は夢を見ているのだろうか。
"人狼"？の男と空を飛んでいる、というか家伝いで走っているが正しいか。
男に横抱きで抱えられ、浮遊感を味わっている。え、殺さないの？
zm｢殺さへんよ、君のことは｣
『何故』
zm｢気に入ったから｣
それだけ告げると意味深な笑みをしてまた前を向く。
意図が読めない。何がしたいんだこの男。
こちとら母を殺され腹も減って絶望しきってたのにそのまま食えばよかったのに。
『今からでも遅くありませんさぁ、早く首を食いちぎって』
zm｢女の子がそんなこと言っちゃあかん｣
『…はぁ？』
そのとき男は勢い良く飛んだ。風が強く吹き顔を隠していたフードが脱げる。
『……！！』
茶髪で後ろの方が少し長いのかゴムで縛っていて、ふわふわと揺れる髪の毛、だけならよかった。
頭、そこには人間とは明らかに違う大きな"耳"があった。
『…じ、人狼、やっぱり、』
zm｢あれ、気付いたと思ったんやけどな、それにしても可愛い反応するなあ｣
飛びながら彼は私の頬に自分の頬を擦り寄せた。まるでよしよしと泣く子供をあやすかのように。
『ちょ、何するんですか！』
zm｢んふふ｣
『笑ってないでなんとか…！』
暴れて叫んだが男は笑うだけ。こっちが噛み付いてやろうかと思った途端男の顔が近付いて首筋に口を付けた。
…なんだ殺してくれるのか。
なら大人しく＿＿＿＿、
『…った』
zm｢おし、上手く付いた付いた｣
…めちゃくちゃ上機嫌で周りに花咲かせるじゃん何それ。
zm｢もうちょいで着くから我慢してな｣
………何処にですか？
＿＿＿
.
.
.
『わぁ…眩しい』
あれから５分ほどして男が足を止めここやで、と声を出した場所。
お金持ちが住むような豪邸だった。
珍しい絵画、珍しい銅像、珍しい食器など村にはなかったものが殆どで探究心を刺激する。
あれはなんだこれはなんだと人狼といることも忘れ男に質問をしていた。
zm｢くっ、はははは、そんな顔をもするんや、可愛ええわ｣
我に帰り男がいる方へ振り返る。
『……ん？』
腰に手を回し抱き締められた。理解が追いつかないですあの、
zm｢…俺のことは｢狼さん｣でも何でもいいから｣
『……帰らせてくれないんですね』
zm｢君に帰る場所なんかあの村にあるか？｣
…いいえありません、貴方のせいで。
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作者名：哭梨 | 作成日時：2021年5月8日 23時
