SJ 草食Ｋ？Ｒ？Ｙ！２

76.すっきり ページ26

いぇそんさんに送ってもらってアパートに帰ってきた
まだ時間があるから、と部屋まで着いてきてくれた
いぇそんさんに食べてもらえるような朝ご飯何かあったかな？
考えながら鍵を開けると、私よりも先にいぇそんさんが上がり込む
まっすぐ窓まで行くと、勢いよくカーテンを開けられた


「A」

「はい」

「どこ？」


手招きされて走り寄る
いぇそんさんは外を睨みつけている
覗かれていた場所を聞いてるんだよね


「あのマンションです」


いぇそんさんの眼がカッと開いた
ガラス戸を開けると深呼吸をし始めた


「勝手に覗き見るんじゃない！ふざけるな！
それにそんな所にマンションを建てたのは誰だ！出てこい施工主！」


ハスキーだけどよく通る声が辺り一面に響き渡った
ガラス戸を閉めてふう、と一息ついて振り返ったいぇそんさんの顔は、達成感に満ち溢れていた


「すっきりした！」

「あは、あはははははっ！」

「え、なんで？何で笑ってるの」


施工主って！
怒りのぶつけどころがツボに入って、涙が出るまで笑ってしまった


「ああー苦しかった…」

「そうか」


満足げにしているいぇそんさんの胸元でシルバーが光った
あ！あれ、渡さなきゃ


「いぇそんさん、これ遅くなっちゃったけど」

「お！」


無事に手渡して、いぇそんさんがかばんに入れているところで「着替えてくるね」と奥の部屋へ入った
姿見に写った自分の顔をジッと見る
笑ってみたり怒ってみたりして、動く唇を見てみる
昨日のキスで気持ちは伝わったのかな…

部屋から出ると、いぇそんさんは後ろ手でそわそわしていた


「時間大丈夫ですか？まだあるなら何か作りましょうか？」


確か食パンがあったはずだから…
冷蔵庫に向かって歩き出した


「ストップ！あ、そのまま」


振り返ろうとするのを止められた
何だろう、抱きしめられたりして…？
いぇそんさんの手が後ろから伸びてきて身構える
その手は予想を外れ、胸元がヒヤッとすると同時にすぐ戻っていった


「Aの為に作ったのだから…仕上げしてもらっちゃったけど」

「ありがとう…あれ？」


手探りで確かめると、もう一つ小さい何かがある
さっきの姿見で見てみると、石の付いたベビーリングだった


「Aっぽいなと思って」

「私の誕生石だ…」


知らずに買ったみたいで驚いているいぇそんさんに私は抱き付いた

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