第13話 ページ14
ショーの前日
私は完全に行き詰まっていた
あおい先輩は私と一緒に過ごすのが"自然"になっていた
いない時は向こうから探してくれるし、カメラを向けても素の顔を見せてくれるようになってきた
作戦はかなりうまく行っていると思う
私はあおい先輩の生活の一部に溶け込んでいた
でも・・・、
A「(撮れない・・・、)」
あおい先輩がキラキラ輝いているところを誰よりも近くで見ているのに、
その輝きを写真に収めることはできなかった
同行取材の約束は今日まで
そしてこれが最後のお仕事
私の写真には何かが足りない
でも何が？どうして私の写真はキラキラじゃないの？
あおい「霧矢あおい、入ります」
スタッフ「お疲れ様です、警視総監殿」
風の強い埠頭のコンテナ置き場
闇に溶けこむ深い紺のスーツ姿で現れたのは"イケない警視総監"役、霧矢あおい
その佇まいは既に役に入り込んでいるのか、優しげな笑顔の下に強い決意と覚悟を感じさせた
これはシリーズを通してその影をちらつかせてきた謎の宿敵と初めて対峙する重要なシーン
衣装にもメイクにも気合が入っている
監督「ちょうど暗雲が立ち込めている感じでイイね、降り出す前にササッと決めよう」
一同「「はい！」」
役者が揃って現場は一気に加速した
私は邪魔にならない場所からシャッターチャンスを窺う
小道具を確かめるあおい先輩・・・、違う
脚本家とセリフを詰めるあおい先輩・・・、違う
やっぱり『イケない警視総監』をしている時のあおい先輩はすごく輝いてる
でも私の写真にそのキラキラは写ってくれない
どうしてなの？
あおい「大丈夫？」
A「えっ？」
私が現場の隅でため息をついていると、あおい先輩が来てくれた
もう撮影は始まってる、休憩なんてほとんど無いはずなのに
私のために・・・、
あおい「緊張してる？もっと力を抜いて、Aちゃんならきっとできるから」
A「先輩・・・、」
あおい「あなたには笑ってて欲しいの、今日はこんな現場だけど・・・、Aちゃんは笑顔を撮る達人なんだから、ファインダーを覗くときにも笑顔を忘れないで？ほら、深呼吸―――」
私は息を吸って、吐いた
そうだった、私、何やってるんだろ
私が本当に撮りたかったのは・・・、
闇の中を、光に向かって歩いていくあおい先輩
その背中に、私はフォーカスを合わせた
ピピ、カシャ
A「(できた・・・、)」
後ろ姿には、見えないはずの笑顔が撮れていた
私は小さく息をついて笑った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きらるり(プロフ) - こんにちは！コメントありがとうございます！ドキドキしていただけてとても光栄です！これからもドキドキなお話を書けるよう頑張ります♪ (2016年9月5日 6時) (
レス) id: f49683637b (このIDを非表示/違反報告)
小林ふうり@dr(プロフ) - 面白かったです。私はあおい推しなのでとてもドキドキして、良かったです。これからも、頑張ってくださいね！ (2016年9月3日 15時) (レス) id: d5d4dc728a (このIDを非表示/違反報告)
きらるり(プロフ) - 夏気味うどんさん» はじめまして！読んでくださってありがとうございます！そう言っていただけると本当に嬉しいです！書いてよかった・・・(´▽`) こちらこそコメントありがとうございました！！ (2016年8月18日 23時) (レス) id: f49683637b (このIDを非表示/違反報告)
夏気味うどん(プロフ) - わーーー！！こういうお話待ってました！！素晴らしい小説ありがとうございますっ！！！ (2016年8月18日 23時) (レス) id: 90d1ded8fc (このIDを非表示/違反報告)
きらるり(プロフ) - 唯さん» 唯さんいつも一番乗りありがとうございます！更新頑張ります！ドロシーのお話も半分くらい下書きできてるのでもうちょっと待っててください( ;￣ω￣)ゞ (2016年8月4日 22時) (レス) id: f49683637b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きらるり | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/krrr_homepage/
作成日時：2016年8月3日 23時
