5章 ページ22
眩しい陽の光に照らされた、この屋敷の最上階の一室。
広すぎるほどのこの部屋の主であるひとりの少女が、写真を眺めて吐息をこぼした。
「…」
まるで愛する人に触れるように、優しい手つきでその写真を撫でる。
高貴な雰囲気を纏う、黒髪で月のような金色の瞳を持つその少女。
…俺は、彼女の持つ苗字に惹かれたんじゃない。
この世に生きる、ひとりの人間としての彼女に惹かれたんだ。
「…うらたん、立ってたら疲れるでしょ?好きな場所に座って」
「はい」
甘い声に、思わず聞き惚れてしまう。
彼女は写真を丁寧に元あった場所にしまい込むと、優雅に立ち上がって俺に近付いた。
その洗礼された動きを見て、「あぁ、なんでこの人はここまで素敵なのだろう」と何万回も思った事を再び考える。
でも、その疑問に答えはいらない。
「あの、A様」
「なぁに?」
「A様は、どうしてあの方々を選んだのですか?」
彼女が違法オークションで購入した4人の人間のことだ。
『婿候補者』として買い集めた、4人の男。
「…彼らの目が、あなた達に似てたの。彼らにはそれぞれ良い所があるはず。それを、見つけたいって思ったの」
「…」
「うらたん、今度はわたしが質問してもいい?」
「なんなりと。」
「ありがと。じゃあ…あなたはわたしのこと、どう思う?」
優しげに目を細めて、ふんわりと笑う彼女。
そんな彼女の微笑が、なんだか叱られるのを怖がる子供のように見えて。
「…もう、どうしようもないくらい、救いようのないほど惚れちゃってます。僕の心身ともに、永遠にあなたのものです」
本心をそのままに伝えれば、彼女は恥ずかしそうに目線を逸らした。
俺の全ては、
あの夜からずっと。
43人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かのこゆり - くりふわ@想伝さん» 質問に答えていただき、本っ当にありがとうございます!バッチリ伝わりました!すごすぎて「あなた」と呼べないほど権力が強くて、手の届かない場所にいる主人公ちゃん。なるほど、そんな思いで「is」なのですね!第三人称の話も納得です。ありがとうございました! (2018年7月18日 23時) (レス) id: 175296d32b (このIDを非表示/違反報告)
くりふわ@想伝(プロフ) - かのこゆりさん» ありがとうございます!!!おぉ…!!前から読んでいただけていたなんて嬉しいです!!!これからもご期待に応えられるよう頑張りますので、また見てくださると幸いです!!また、isの意味は本編で解説しようと思うので少々お待ちください!! (2018年7月18日 13時) (レス) id: 77ed961b3e (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - もしよかったら、なぜ「Who "is" you」にしたのか教えていただきたいです一個前のコメント、送れてないと思って二度送っちゃいました(汗)気にしないでください。長文失礼しました。 (2018年7月18日 12時) (レス) id: 175296d32b (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - あ、ちなみにまふくんの最後の一言について。さかたんが「鳳凰は愛の象徴」といっていることから「ぼくも『あい』、くれませんかね」という意味だと思いました。最後にいろいろな解釈ができる言葉を持ってくるあたり、さすがくりふわさん!という感じです。 (2018年7月18日 12時) (レス) id: 175296d32b (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - はじめまして!かのこゆりです。やっぱり素敵ですね…。どうしたらこんなに読みやすくて美しい文章が書けるのか教えてほしいです!ひっそりと読んでいたのですが、やっぱりくりふわさんのファンです!これからも素敵なお話を書き続けて下さい!応援しています! (2018年7月18日 12時) (レス) id: 175296d32b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ