壊していいよ☆（だめです） ページ7
「もふくんっ…！」
追いかけて、追いかけて
同じ道を通ったはずなのに、もふくんは見つからなかった。
「…」
そして、最初に見たものは
豪華絢爛な造りをした死神様の屋敷と
その近くで困った顔をしている生き神様だった。
「生き神様…？」
「ん…？妖狐と…座敷わらしに九尾の狐？」
ふんわりとした白色の髪、ぱっちりと開いた金色の目。
生き神様が祀られている地方の、伝統的な造りをした巫女服を身にまとい
その足元には美しい草花が芽吹いている。
生き神様は、すべての生物の"生"を司る神。
死神様とは真逆の存在だというのに、なぜ死神様の祠の目の前にいるのだろうか。
「なにか、あったんですか？」
「ん？えーっと…死神をここから連れ出すことって、できる？」
どこかで見たことのある光景だ。
(たしか…そうだ、るな様の時の)
「先に状況を説明してもらってもよろしいでしょうか」
のあさんが一歩前に歩み出て、生き神様を真正面から見る。
「うーん…説明かぁ…」
顎に手を添えて、難しそうな表情をする生き神様。
その姿は、神というよりも、人間の子供に見えてしまう。
「他言無用で、お願いできる？」
「もちろんです」
生き神様は困ったように話しだした。
「昨日から、死神がここから出てこないんだよね…今日は五代神会議がある日なのに…」
死神様は、神の中で唯一と言っていいほど、露出の多い神様だ。
なんなら、海を超えた西洋まで名が広まるほど歩き回っている。
その死神様が、祠から出てこないというのは、かなり珍しい事態だ。
「でかけているだけっていう可能性は…」
「死神は案外しっかりしているからね。そんなことはないと思うんだよ」
要するに、前のるな様みたく閉じこもっているというわけだ。
「でも、祠は俺たちじゃ壊せないし…」
「私が許可するから、壊していいよ☆」
(いや、だめだろ)
どぬくは心の中ではそう思いながらも、未来の自分から、死神様に師匠をたくせと言われているため
正直、死神様に閉じこもられては困る。
「…本当に壊してもいいんですね？」
「うん！オッケーだよ！」
どぬくが扉に刀を向けたその時
「誰の祠を壊していいって？」
「…死神様！？」
中にいるはずの死神様が、外にいた。
「ん？生き神？…ああ、今日は五代神会議があったな」
生き神様は、無表情に死神様を見据えて
ゆっくりと右腕を上げた。
白く細い淑女の指が、死神様を指差す。
「…君、誰？」
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作者名：青空 冬 | 作者ホームページ：sakurasaku
作成日時：2024年2月10日 22時
