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聖なる炎 ページ6

「妖狐クン、助けてくれない?」
その言葉の意味を理解する数秒の間に、のあの体は動き出す。
もふは、自らの片割れを睨みつけながら、無言で右手の人差し指をたっつんに向けた。
のあはたっつんに駆け寄り、妖術【朧火】を使用して、たっつんを燃やした。
妖狐や九尾の狐が使用する【朧火】は、聖なる炎だ。
たとえダメージが入らなくても、邪なるものを打ち払う力を持っている。
燃やされた雷神の体が、少しずつ溶けて、黒い泥のようになり、地面に落ちてゆく。
「えっ…」
どぬくは唖然とした顔で、たっつんともふを交互に見ていた。
先程まで優しそうだったもふが、今はひどく恐ろしいものに見える。
感情の抜け落ちた顔に影が堕ちたその姿は、見たものを無条件に恐れさせる、美しくも恐ろしい顔。
「ねえ、どぬくさん」
「なに…?」
怖くて、否定することも、何も出来なかったどぬくに
もふは笑いかける。
「本当に守るべき人は誰か、なんて、未来の君でも分からなかったみたいだね」
そう言って、もふくんは走っていく。
その方向にある物はただ1つ。
死神様の祠だ。

「…っ!もふくん!」
どぬくは数秒たった後、我を取り戻し、慌ててもふを追いかけた。
その背中を、えととのあが追いかける。
(大丈夫、きっと、もふくんにも何か事情があったんだよ。だって、そうでないと、そうでないと―――)
脳裏に浮かぶのは、神を憎み、人を憎んだ一人の少年。
二度と返ってくることのない、一人の人間。
(ゆあんくんみたいに、消えちゃうから)


(これで、これでいいんだ)
もふは、森の中を走りながら、死神様の祠に向かう。
きっとこれで、どぬくさんは自分を追いかけてくる。
(俺だけじゃ、きっと解決できない。未来のどぬくさんの意図も大体わかった。
 力のない俺には何も出来ない。だから、だから―――)
死神様に頼るように、何かから逃げるように、もふはひたすら走る。

「あれ、もふやん。どうかしたん?」
「…」
操れる対象は、いない。
俺の目の前にいるのは、俺の知らない、俺の片割れ。

(…終わったな)

せめて、どぬくさんが、未来のどぬくさんの意図に気づけたら―――。
たっつんが、もふに手を伸ばす。
絶望に色塗られた虚ろな目が、黄色い髪を映す。
その手が自らに届く前に、もふは呟いた。


「お前―――誰だよ」

壊していいよ☆(だめです)→←俺の師匠でいてほしい



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作者名:青空 冬 | 作者ホームページ:sakurasaku  
作成日時:2024年2月10日 22時

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