弱虫弟子と強がり師匠６ (ページ5)

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俺の師匠でいてほしいページ5

「っ！どぬく！」
「ししょ…えとさん！？」
えとの家に向かってもえとがいなかったため、
どぬくが途方に暮れていた所、師匠が走ってきた。
「ごめんっ！」
「えっ…。え？」
混乱するどぬくに、えとは必死で頭を下げる。
「私が、間違ってた！サンザシが偽物だとしても、目の前で友達が殺されたっていう事実に打ちのめされて
　それで…」
「…」
どぬくは、無言でえとを見つめる。
(言い訳だ、こんなの)
えとは、心の中で呟く。
たとえ私にどれだけの事情があっても、私からどぬくを否定してしまったことは変わりない。
この子はもう、私のことを"師匠"と呼んではくれないかもしれない。
この子の"師匠"では、いられなくなるかもしれない。
そうだとしても、私にどぬくを責める権利はない。
「いや、許すんですけど…えーっと…」
どぬくは、しばらく口ごもり、恥ずかしそうに指をこね
そして、決心したように顔をあげた。
「一個だけ、お願い聞いてくれますか？」
「…それで、許してもらえるのなら」
どんな要求がきたとしても、えとは答えるつもりでいた。
たとえそれが、命を対価にしていたとしても。
「じゃあ…まだ、俺の師匠でいてくれませんか？」
「…っ！」

『もう私を、師匠なんて呼ばないで』

あの言葉を、どぬくはずっと気にしていたのだ。
それでも私を師匠と呼ばしてくれるのか、この子は。
口元から笑みがこぼれる。目の奥が熱い。否定されなかったことが嬉しくて、視界がぼやけていく。
「…そんなことでいいなら」
この子は、どこまでもいい子だから。

そして、その時二人は気づいていなかった。
…否、誰も気づいていなかったのだ。
Sランクだから、普通は気づくのだろう。
でも、えとは気づかなかった。どぬくだって、未来の自分がいなければ、気付けない。
(バカだよなぁ、ほんと)
その場にいた、たっつんは、ゆっくりと二人に歩み寄る。
そして―――

「よかったやん！仲直りできて！」
「うわっ！たっつん！？」
右手にどぬく、左手にえとを寄せて、明るく笑う。
「いやー、なんか俺だけ取り残されとった感じがしたけど、解決したんなら何よりやわ！」
「…」
その姿を、もふは黙って見つめる。
そして、右手を真横まで上げて、小さくなにかを呟いた。
その途端に、近くの茂みが揺れ、人影が現れる。
「…のあさん、ですよね？」
「あはは…」
のあは困ったように笑っている。
その姿は、猫又ではなく九尾の狐だ。
「ちょっと、妖狐クン、助けてくれない？」
のあの体には、紫色の靄をまとっていた。