弱虫弟子と強がり師匠６ (ページ2)

今日:9 hit、昨日:8 hit、合計:235 hit

泣いてしまったほうがページ2

「どぬく…？」
驚いたような顔で、どぬくを見つめるえと。
それでもどぬくは、平静を保っていた。
「なんで、サンザシを殺した？」
えとの顔に、慈悲など浮かばない。
旧友を殺された怨みに支配されたその心情を変えさせるなんて
きっとどぬくにはできない。
「師匠…」
「やめて」
話しかけようとした言葉を、えとは振り払う。
「もう私を、師匠なんて呼ばないで」
「…っ」
あたりまえだ。どぬくは頭の中で呟く。
目の前で旧友を殺されたんだ。あたりまえだよ。
たとえそれが偽物だとしても、その心の傷は、計り知れないほど深い。
「…ごめんなさい」
「えっ…ちょ、どぬくさん！？」
それだけ言い残してその場から走り去るどぬくを、もふは慌てて追いかけた。
その場に残ったるな様は、顎に手を当てて何か考えて―――
(あれ…シンチュウじゃ、なさそう？)
やっと真実に気づいたのであった。

「ﾊｧｯ…ﾊｧｯ…どぬくさん…足早い…俺、神なのに…」
「…っ！もふくん…！」
どぬくはもふの方を振り返り、ポロポロと涙をこぼす。
「どうしよぉ…俺、師匠に…っ！師匠に嫌われたっ…！」
「どぬくさん…」
もふが慰めの言葉を紡ぐ前に、どぬくは言葉を放つ。
「サンザシさんを殺しちゃったからっ…！でもっ…あの時殺さないとっ…うわぁぁぁぁぁん！」
とうとうギャン泣きし始めたどぬくに、もふは少し困ったように眉を下げて
ポンポンと頭を撫でる。
「大丈夫、俺は分かってるから…いや、完全にはわかってないけどね？
　でも…どぬくさんがあの人を殺すってことは、それほどのなにかがあったって事だよね。
　…俺に話してみてくれる？」
「…うん」
安心してしまったどぬくの目から、また涙がこぼれ落ちる。
「泣くつもりないのになぁ…ｸﾞｽｯ」
だって、ここは高い場所でも、暗い場所でもないのに。怖い場所じゃないのに。
それなのに泣いているなんて、変なの。
そう思っても、涙が止まることはなくて
むしろだんだん多くなっている気がする。
「泣いてもいいよ」
もふは、安心させるようにどぬくを抱きしめる。
「泣くのは悪いことじゃないもん。まだ心がある証拠だよ」
「でもっ…」
昔、村の子達からは、泣いてしまえば、醜いと言われて石を投げられた。
だから人前ではあんまり泣きたくない。
師匠は―――別だったけど。
「大丈夫。泣かずに溜め込むよりも、思いっきり泣いちゃったほうが
　きっと…ううん、絶対体にはいいし、その方がどぬくさんもスッキリするでしょ？」
「うぅ…もふくんんん…！」
そのままどぬくは泣き叫び、泣き止むまでに１０分ほどかかったが
その間ずっと、もふはどぬくを優しく抱きしめていた。