九話 ページ9
ガタゴトという物音に、俺は布団を引いて寝そべっていたが、起き上がって扉を見やる。
…喧嘩でもしてんのか？
その時、携帯から通知音が鳴る。いつもの仲間からだ。
「巻き上げた金でゲーセンでも行かね？」
またかよ、と半ば呆れながら返信する。もちろん行くに決まっている。
携帯をポケットに突っ込んで部屋を出る。居間からの物音は今でも続いていた。
襖をほんの少し開けて中を覗き見ると、二人の兄がお互いを殴り合っていた。
うわあ…とか思いながらそこから離れようとした時、十四松兄さんの声が響き渡る。
俺はその声に再び肩が震える。
「あっれぇ、そこにいるのはA！？ 何してんの？」
六人分の視線が集まり、俺は短く舌打ちをして襖を開ける。
再び通知音が鳴ったので携帯を取り出し、いじりながら兄貴たちに要件を告げた。
「俺、仲間と遊びに行ってくるから。多分、今日はもう帰んない」
顔を上げると、ぽかんとしたアホ面があって、俺は吹き出しそうになるのを抑えて玄関に向かった。
「A！ お前、なんでまたこんな時間に…」
青いパーカーに身を包んだ兄貴が俺を止める。
俺は振り返って、ニッと笑ってやった。
「別に？ 心配されるほどじゃねぇし」
一松兄さんが飛び出て来て、「傷に染みるから」と珍しく声を上げた。
さっき巻いてもらった包帯を思い出しながら、一松兄さんを見据える。
「もう行くよ。遅れるとめんどくせぇし」
スニーカーを履いて玄関を出る。後ろから兄貴たちの声が聞こえたが、俺はその声を無視した。
ましてや、あの二人がヒートアップしていく声すらも。
「もおぉ、二人とも、止めてよね！！」
六男にそう言われた俺達は、居間に正座して座り、説教を受けていた。
「それよりもさぁ、A、家飛び出してったけどどうかした？」
俺が軽々しく言うと、チョロ松がこっちを見て睨みつけてくる。
…そんなにアイツの事が嫌いか。
カラ松がそれを察してか、どこか言いにくそうに俺達の前にどかっと座った。
一松は部屋の隅っこかから険悪ムードをぷんぷん醸し出してカラ松を見ている。
「……仲間と遊びに行った」
チョロ松が激怒したように床を殴りつけた。これはやべぇな。
その時だ。チョロ松は急に立ち上がり、乱暴に襖を開けて外に飛び出した。
×××
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルアルア(プロフ) - アイカさん» コメントありがとうございます! 一松ってチョロ松の言った通りジョーカー的存在として根強く私の中にいるので、そんな感じにしたくなりますｷﾘｯ コメント嬉しいです! ありがとうございます! (2016年10月17日 18時) (
レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - う、うおおおお……！一松はほかの兄弟に真相を話すのか、話さないのか……楽しみです！コメ失礼しました！ (2016年10月15日 23時) (レス) id: a128eaf6e8 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございます! 私自身主人公が荒くれてる系が好きで、何故か作品にも影響が…(( これからも頑張ります!! ありがとうございます! (2016年10月10日 18時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます! そう言って貰えるととても嬉しいです!! 更新がとても不定期ですが、これからも頑張って参ります(真顔) (2016年10月10日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - すっごく好きです、こういうの！続き楽しみです！ (2016年10月9日 22時) (レス) id: 7fd415952d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルアルア | 作成日時：2016年8月29日 19時
