三十五話 ページ35
チョロ松が玄関に行く。その間、重たい空気が居間を包み、誰も声を発さなかった。
すると、ガラッと音を立てて居間に誰かが入って来た。
大方チョロ松かと思ったら、そこにいたのは弱井だった。
「トッ、トト子ちゃん！？」
セーラー服を着て、俺たちを見降ろす。
そしてその視線は、俺に向けられた。
「……A君。聞きたいことがあるの。こっちに来て」
なんで、と訊こうと思ったが、野暮な質問だ。俺は黙ってそれに従った。
弱井の前に立ち、首に手を当てて曲げながら「何？」と問う。
「一松くんを傷つけたって、本当？」
「――――………はあ。お前らそればっかだな。
ああ、そうだけど？ それが何」
眉根を寄せた弱井は、セーラー服のスカートを握りしめ、俯く。
「だから、それが何？」いい加減呆れ、俺がそう言うときっと顔を上げ俺を下から睨み上げた。
「どうして、そんなことしたの？」
「ほんっと、うざった。アンタに関係ないだろ。兄弟のことに一々入ってくんなよ。
幼馴染っつっても、所詮は赤の他人だろ。構うなよ」
それに、と言葉を続ける俺に、弱井はどんどん目に涙を浮かばせた。
「俺が誰を殴ったって、別にどうだっていいだろ？」
パアンッ、と音が鳴り響き、頬に熱い痛みが走った。
その時、俺は頬を叩かれたんだと悟った。
弱井は目から涙を流し、ただ一言、言い放った。
「――――最低」
くるりと踵を返し、弱井は居間を出ようとする。
俺は頬に手を当てたまま、にやりと笑った。
「言いたいことは、それだけ？」
ばっと首だけをこちらに向け、弱井は泣きながら叫んだ。
「アンタなんて…。アンタなんて、幼馴染なんかじゃないわよ！！
見損なったわ！」
家を飛び出し、弱井は走り去った。
俺はちらりと後ろを振り返る。兄貴たちはただこちらを見ているので、俺は「何？」と訊く。
トド松兄さんが「座って」と強く言うので、俺は黙ったまま、さっきの場所に座る。
「A、一松に謝れ」
カラ松がそう言うので、俺は肩膝を立ててぶっきらぼうに言う。
「…ごめん」
ぴくんと眉を動かし、苛ついた雰囲気を醸し出す。
この場の空気に耐えられなかったのか、おそ松を除いた全員が二階に上がると言った。
一松兄さんの手当てをするらしい。
おそ松は、５人の背中を見つめながら、ずっと黙っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルアルア(プロフ) - アイカさん» コメントありがとうございます! 一松ってチョロ松の言った通りジョーカー的存在として根強く私の中にいるので、そんな感じにしたくなりますｷﾘｯ コメント嬉しいです! ありがとうございます! (2016年10月17日 18時) (
レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - う、うおおおお……！一松はほかの兄弟に真相を話すのか、話さないのか……楽しみです！コメ失礼しました！ (2016年10月15日 23時) (レス) id: a128eaf6e8 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございます! 私自身主人公が荒くれてる系が好きで、何故か作品にも影響が…(( これからも頑張ります!! ありがとうございます! (2016年10月10日 18時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます! そう言って貰えるととても嬉しいです!! 更新がとても不定期ですが、これからも頑張って参ります(真顔) (2016年10月10日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - すっごく好きです、こういうの！続き楽しみです！ (2016年10月9日 22時) (レス) id: 7fd415952d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルアルア | 作成日時：2016年8月29日 19時
