だから、何？

懐疑 ページ6

侑side


侑「ただいまー」

治「ただいま。おかんとAおらへんな」


部活から家に帰ると、いつもキッチンにおるおかんがおらんかった。

弁当箱をカバンから出そうとした時、2階からAの声が聞こえた。


『もうええから出てって！はよ！』

侑「機嫌悪いんか、珍しいな」

治「ついに反抗期か」

侑「何ニヤニヤしとんねん」

治「してない…おかん、どないしたん」


リビングに戻ってきたおかんは泣きそうな顔しとった。


ママ「今日はあんまりAにちょっかい出さんとってや。神経質みたいや」

侑「どーゆーこと？」

ママ「さっき三者懇談行ってきたんやけど、あの子、最近部活行ってへんらしいわ。私も知らんかってん、母親やのに…」

治「ほんま？」

侑「いじめられとんのちゃうやろな」

ママ「双子の妹ってレッテルが嫌らしいわ。ママに何が分かんねんって言われてしもた」

治「あいつ…おかんに何て口の利き方しとんねん」


双子の妹というレッテル、それがどれだけAを苦しめとるかは俺には分からん。

けど、俺らが理由でバレーを嫌いになってほしくない。


うちは両親共働きやから朝は俺らとほぼ同時に出て行く。

必然的にAの1人の時間が増えるのは当たり前で、おかんとおとんがAの様子を知らんのも当然やった。

俺とサムも、Aと遊ぶことが減った。

部活から帰ったら飯食って風呂入って寝るだけ。

Aは部屋に篭もりがち。

顔を合わすのは朝のほんの数分やった。

サムはたまにAの部屋勝手に入って怒られとるけど。


「なぁ、サム」

治「なんや」

「Aの気持ち分かるか？」

治「分かるって言いたいけど、分からへん。最近めっちゃ冷たいねん」

「部屋行ってみよか」

治「ツム、いらん事したら嫌われんで。俺は好かれとるけど」

「どこがやねん」


Aの部屋の前に立って、ノックしてみる。

返事はない。寝とんのか？

もう一回ノックしたあと、静かにドアを開けてみる。

Aは制服のまま、こちらに背を向けて寝とった。

肩辺りまで伸びた髪が乱れている。


「なんや、寝とるやん」


ベッドに腰掛けて、頭を撫でる。

頬には泣いた跡がある。


治「寝顔もかわええなぁ」

「俺らの妹やでな」


規則正しい寝息を立てて眠るAの隣にサムが寝転がる。


治「また、3人でバレーしたい」


サムの言葉は空気に消えた。

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