りょうすけせんせい

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涼介side


…楽しい時間はあっという間に過ぎ、もう帰りのバス。

しかし…そこに侑李くんの姿はない。

きっと今ごろ、別の先生とお部屋で遊んでいるだろう。

宏「りょーすけせんせ、おはなしがんばってね」

宏太くんがバスを降りていくとき、手を振りながら宏太くんがそう言って。

恐らく、少ししょんぼりしながら手を振ってた侑李くんが気になってるんだろうなぁ…

お話を頑張るっていうか…侑李くんママの説得を、頑張らないと。

涼「ん、大丈夫だよ！絶対皆でお泊まりさせるからね」

そう言う俺を見て、宏太くんがふにゃりと目を細めて笑って、お母さんと家に入っていった。

皆、お友達思いのいい子だな…

皆の気持ちに応えるためにも、俺が何とかしないと…

宏太くんが一番最後なので、もうバスには俺と増田先生だけ。

…っし、幼稚園戻ろ。

宏太くんを見送りバスに乗り込むと、運転席から増田先生がこっちを覗いていた。

増「山田先生ー、あんまり一人で気負いすぎちゃダメだよ？」

涼「え？」

増「朝あんだけ怒鳴られて、今不安じゃないわけがないでしょ。話し合いには小山先生が立ち合ってくれるし、助けはちゃんと求めなね？」

…確かに、不安はあるけど…というか、不安しかないけど。

そうだよね。

俺にはこんな頼りがいのある先輩がいるし。

涼「…はい！」

なんかそう思ったら、少し勇気が湧いてきた…気がする。



涼「…あれ」

もう少しで幼稚園につく、というとき。

ボーッと窓を見ていた俺は、ある人に気付いた。

増「んー？どうしたの？」

涼「あ、いや、あそこの電柱のそばの女性…」

黒のワンピースを着て、じっとこのバスを見る女性。

…この前雄也くんと廊下を歩いていたときに、柵の向こうにいた女性とよく似ている。

やっぱり、なーんかみたことある気がするんだけど…分からない。

目線をそらさずにまっすぐこちらを見てくるその女性に、ほんの少しだけ恐怖を覚えた。

増「わぁー、洋服真っ黒だね。俺なら考えられないわ」

…先生は割りと奇抜な、個性的なファッションセンスの持ち主で。

女性の真っ黒コーデを見て、うわ…と声を漏らした。

いや、めっちゃ失礼だし、何より…俺も普段、真っ黒多いんですけど…

涼「実は、この前にもここら辺で見かけて」

増「へぇ…なんか気味悪いね。子供ためにも、ちょっと注意しとこうか」

そうですね、と返事をし、俺は侑李くんママのことを考えながら再び窓をボーッと見ていた。

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