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侑李side
大「侑李!」
後ろから、大兄の声が聞こえた。
涙でぐちゃぐちゃの顔を見られたくなくて、振り返らずに立ち止まる。
分かってた。
副作用の話は、宏兄から聞いていたから。
吐き気も、食欲不振も、脱毛も…
分かってたはずなのに、それでも辛くて…逃げ出してきてしまった。
一番辛いのは、涼介なのに…
大「侑李…」
侑「ふっ…グズッ…」
そのまましゃがみこんで手で顔を覆う僕を、大兄が抱き締める。
侑「りょっ、すけの…っ前では…笑顔でいようってっ決めたのに…!支えてあげようって…思ってたのにっ…!」
涼介に何もしてやれなかった挙げ句、逃げてしまった僕。
こんな弱い僕に、悔しくて。
日に日に弱っていく涼介を見て、このまま本当に死ぬんじゃないか…と思っている僕に、腹が立って。
その思いが、涙になって溢れてくる。
侑「僕は…っ涼介にっ、何をしてあげられるっ?」
大兄の抱き締める力が強くなる。
大「侑李は…涼介の側にいてやるのが一番だよ」
涼介の…側に…?
大「涼介は、いつも寂しそうにしてた。今日、久々に全員が来てくれて、本当に嬉しそうにしてたよ?」
大兄は僕を離して、今度は向かい合わせになるように僕を回転させた。
近くにある大兄をじっと見つめる。
大「侑李…涼介は、これからももっと辛い副作用に耐えなきゃいけない。そんな中で、毎回侑李が逃げ出すの?涼介がどう思うか分かるでしょ?」
侑「…うん…っ」
大「…俺だって、辛いよ…だけど、俺らには俺らに出きることがある。涼介を…元気付けてあげよう?」
大兄の言葉に、涙を流しながら大きく頷いた。
いつもは大兄をバカにしてる僕だけど…やっぱり大兄もお兄ちゃんなんだね。
大「ほら、今のうちに泣きたいだけ泣きな?」
その言葉で、僕は大兄の胸の中でしばらく泣いていた。
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楠木りずむ(プロフ) - い・ろ・は・すさん» 嬉しいコメントありがとうございます!遅くなってすみません…!再発の続編は…正直少し書くのが難しいです(′;ω;`)ですが、新しい長編か短編集は作りたいと思っていますので、そちらを楽しんでくれるとありがたいです! (2018年12月29日 23時) (レス) id: 9a431af939 (このIDを非表示/違反報告)
い・ろ・は・す - そして、りんごさんのいうように再発で続編を見たいです!活動再開後頑張ってください!図々しくてすみません (2018年12月20日 21時) (レス) id: 6b690ae98e (このIDを非表示/違反報告)
い・ろ・は・す - 楠木りずむさん» この作品大好きです!私も今、受験生です笑楠木りずむさんも受験終わったら小説の更新頑張ってください! (2018年12月20日 21時) (レス) id: 6b690ae98e (このIDを非表示/違反報告)
楠木りずむ(プロフ) - りんごさん» すみません!私現在受験生であり、今更新してるお話以外の新作を出すつもりはございません……でも、そう言って頂けて本当に嬉しいです!活動再開したらまた病系短編集書きたいなと思ってるので、その時はよろしくお願いしますm(_ _)m (2018年8月20日 11時) (レス) id: 9a431af939 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 再発で続編見たいです (2018年8月20日 8時) (レス) id: 7c5aa7c9e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楠木りずむ | 作成日時:2016年7月15日 19時