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慧side



慧「やぶー、おそーい」

宏「遅いってお前準備したの！？すぐ家出れるようにしないと間に合わねぇよ！？」

慧「昨日のうちにしたもん。………あ、」




『続いては……ancyの皆さんでーす！』





バタバタと、寝ていた薮がせっせと仕事の支度をする午後6時頃。

テレビ前で待機していれば、朝まで家にいたはずの4人が、アイドルの姿でカメラに手を振っていた。




宏「始まった？」

慧「ん。ちょうど今」




寝癖がぴょこんと跳ねた姿とは対照的に、しっかりヘアメイクもしてキラキラした衣装を纏って、ニコニコと輝く笑顔を惜しげも無く振り撒いている。





…………それはもちろん、山田も同じです。





ぽっと赤く染まっていた頬は恐らくメイクによって隠され、多少目の水分量は多いけど、それでもいつも通りに笑顔を浮かべていた。



『えー、まだデビューして間もないancyの皆さんですが、本日披露して頂くのは山田さんが主演のドラマ《○○○○》の主題歌ということで…山田さん、見所をお願いします！』

涼『はい！えー来週金曜日夜10時からですね、いよいよ僕が主演を務めるドラマが始まります！この作品は…………』





宏「…………」

慧「…………」




ほんとに、すげぇなこの子らは。





俺らよりも遥かに歳下の高校生のはずなのに、険悪だったムードも、体調不良も、それに対する心配も全部全部隠してこうやって表舞台に堂々と立ってるんだから。



客席の方からはちょこちょこと声も聞こえるし、曲が始まる直前も、始まってからもずーっと歓声が鳴り止まなくて。



知念が美しいターンをすれば、
裕翔が綺麗な歌声を響かせれば、
大ちゃんが華麗なステップを決めれば、
山田がバチッとウィンクすれば、


たちまち、黄色い声がテレビから聞こえ、SNSにはすぐにトレンド入りするほどだった。




……一緒に住むようになってから、実はちゃんとテレビで彼らの姿を見るのは初めて。

というのも、俺らもまとまった時間はなかなか取れないし、本人たちは自分のを見るのは嫌だって言うから、録画したまま見れていないものが多いのだ。





けど。


だからこそ……初めて見たちゃんとしたアイドルの彼らに、思わず圧倒されてしまった。




宏「……今のホントにうちの子？」

慧「……別にお前の子じゃない」

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