狼 青 年 〜素顔を見せた彼〜

休み明け ページ1

宏太side



冬休みが開け、今日から3学期。

俺たち3年は、残り僅かな高校生活となった。



この学年は受験に向け、ピリピリムード。

進学を考えていない俺や雄也は、その空気感に飲み込まれるだけ。

正直この時期になると、ろくに高校に来ないやつだっている。

受験で使わない教科や範囲外の内容を扱うことも増えたために、学校行くよりも家や学習塾で勉強した方がいい、という考えの人が増えるからだ。

紅白のときだって、俺らのクラスLINEは静かだった。




だからこそ…登下校くらいは、楽しく過ごしたいと思ってたんだけど。





『ごめん、今日は行かない』





そんなメッセージが並ぶスマホの画面に…思わず、ため息を吐く。





大「あれ、薮くん？」

宏「あ、おはよ大ちゃん。いつも遅刻ギリギリなんじゃなかった？」

大「始業式くらいはと思って。……山田は？」

宏「……今日は、休み」




電車の中でそんな会話をすれば、「そっかぁ」と大ちゃんが言ったきり、会話はなくなった。

……単に眠いのか、それとも…涼介の事が気になるのか。







涼介は紅白の舞台で、自分の過去のこと、施設暮らしであることを赤裸々に話した。


でも、それでもそれは、“茜”のことであって。

茜が山田涼介であるとは、断言していない。



SNSで流れたあの情報だって、一部はデマだと言ったようなものだ。

結局の所茜の正体が誰なのかは…明確に、世間には知られていないことになる。





……だからこそ。
涼介は、怖いんだろう。



涼介は茜なのかと、問い詰められることが。

あの過去を持つのが本当に山田涼介なのかと、知られてしまうのが。




雄「あれ、2人ともおはようー。……山田は休み？」

宏「うん、休み」

雄「………そっか」





……それがわかっているからこそ、無理に外に出すことも出来なくて。

こうやって、黙って涼介を待つしかないんだ。

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