狼 青 年 〜素顔を見せた彼〜

＊ ページ11

涼介side



裕「ヤマ！」





…………やってしまった。




もしかしたら。
今日がクラスメイトと喋る、最後の日だったかもしれないのに。



裕「ヤマっ、待って！」




いつの間にか教室から飛び出していた体は、手を掴まれたことによって止まる。


気付いたら下駄箱まで来ていて、手にはケースから飛び出た薬。





嫌われる。

こんなの、嫌われるっ……



裕「ヤマ………」


涼「…っ、ふ…………っ……」






やっぱり、来なければ良かった。

こんなことなら、皆に顔を合わせないままで…………





「あっ、いた！山田！」

涼「っ！」

裕「え…………」





…………聞こえた、その声に。


また、体は動き出そうとした。





裕「っ、待って！」





…生憎………手は掴まれたままで、それは叶わなかったけど。





クラスメイトの……それも、今まで1番俺に話しかけてくれた奴。

まさか、追いかけてくるなんて思わなかった。



何を、言われるの？





また、気持ち悪がられる？

親がいないからって言われる？

それとも、可哀想だと思われる？

幻滅される？






今までの俺と、明らかに違うことは気がついてるはず。

茜の件だって………きっと知ってる。




薬なんて大量に持って、もし俺が茜だって確信を得たら……そしたら、きっと軽蔑して。

それで、また嫌われて……SNSで回されたり………










「急に走り出すなよお前！教室行こうぜ？……あ！それともお前日本史のテスト忘れてたとか！？笑」








涼「……ぇ…………」








…………え？







恐る恐る、振り返る。



俺の手を掴む裕翔の後ろには、いつもの顔で笑ってるクラスメイト。




涼「なん、で…………っ」

「なんで？……何が？」





そう聞くと、キョトンとした顔でそう言った。








………なんで……？

だって、俺…………






涼「だって……っ、いままでと、おれ全然ちがうしっ………薬………ずっと、薬も持っててっ………それでっ、しかも…あかね、かもっ、て…っ」



「それがなんだよ？別に気にしてるやついねぇよ？……いやまぁ、茜の件に関してはちょっとは気になってるかもしんねぇけど笑 山田が話したくないことなら聞こうとなんてしないだろうしな」

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