狼 青 年 〜フードの奥の素顔〜

＊ ページ4

裕翔side



涼「……多分、やらないかな…」

「え、なんで！？俺らお前らのダンス見る機会ねえじゃん！！」

「確かに……中島くんのダンスとか想像つかないもんね」

「なんならここでやってもいいと思う！」

「Honey Beeの曲とか？」

「めっちゃいい！！しかもちょうどダンス部5人じゃん！！」

涼「あ、えっと……」





…………まずい。

非常にまずい。


この流れは良くないぞ………




助けを求めるようなヤマの視線。
でも、いい言い訳が思い浮かばず、俺も口ごもってしまって。


正体不明の俺ら、Honey Bee。

クラスの人にも、親友にだって内緒。

作品に携わってくれた方ですら、俺らが誰で何をしてるのかを知らない。

そこまで守ってきた秘密があるからこそ……ここでもし踊ったりなんてしたら……



………とりあえず。

クラスの出し物に話を逸らすしか……






「こんちわーっす。お、裕翔やってんね」

裕「……は？」






…………そんなとき。




教室の前の扉から………よく見慣れた人物が、顔を覗かせた。









涼「……薮ちゃん……？」

宏「おう」

裕「え、なんでここに…」




突然の3年生の登場に、ザワつく教室内。

気にすることなくにこやかに笑って、担任に会釈してる薮くん………ちょっとは気にして欲しい。





宏「2人に伝言です」








“初めての文化祭で申し訳ないけど、ダンス部は参加出来ません！”





…………え？









.









宏「あ、おつかれ〜ふたりとも」

裕「おつかれ〜じゃないよ！どういうこと？」





結局時間が来てしまい、俺のクラスの出し物は決まらなかった。


けどそんなこと、俺らからしたらどうでも良くて。




大会があるからダンス部は文化祭に参加出来ない、なんて言われて……あの場では助かった、なんて思ったけど。

もちろん俺らは大会になんてエントリーしてないし、そもそも出れるわけが無い。



とりあえず話は合わせておいたけど…




大「大会ってやつ？あれほんとになに？」

涼「……まさか、ほんとに何かに出るの…？」

宏「いや、違う違う………まぁそれは、もうすぐマネージャーが来てくれるからさ。そのときに」




………え？

マネージャー？？

今までそんなのいなかったのに……





どんどん意味の分からないことを言う、薮くんに。

高木くん以外の俺らは、怪訝な顔を向けた。

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