狼 青 年 〜フードの奥の素顔〜

＊ ページ22

涼介side



「次のお仕事ということで、Honey Beeさんはお別れになります！本当にありがとうございましたー！！」





…………終わっ、た…




司会の方のそんな声に、肩の力が……いや、体の力が、かくんっと抜けて。

まだ舞台上なのに座り込みそうになって、そばに居た薮ちゃんの体にとんと当たる。



宏「おっと。大丈夫？」

涼「…ちょっと……ほっとしちゃった…」

宏「そっか笑 ほら、空たちもう捌けてるよ」



ぽんぽんと肩に手を乗せる薮ちゃんに促されるように、舞台上を後にして。

その間にもなりやまないHoney Beeコールに、何だか涙が出てきそうになった。



裕「お疲れさま！」

雄「お疲れーぃ」

大「すっっげぇ楽しかった！」




………大ちゃんの、言う通り。


本当に……本当に楽しかった。

音楽がなった途端は、バクバクと忙しなく動く心臓に死ぬんじゃないかとすら思ったけど。

一言歌えば……それが楽しさに変わって。

自分が想像していたよりも遥かに、ステージの上は魅力的だった。





秀「ほらみんな！浸ってる場合じゃないよ！笑 まだステージあるんだから急いで！」

宏「あっ、はい！」



秀さんの声に、全員がまた、動き出す。



……そう…これで、終わりじゃない。

明日も合わせてまだ、4ステージ残ってるわけで。


しかも最後のステージは……あの、高校で……




秀「…茜、くん？行くよ？」





………ダメだ。
今は、目の前のステージに集中しないと。



まだあまり話せたことの無い秀さんに、小さく頷いて。

自分の荷物を持って、急いで体育館を出た。









.









……そして、2校目。


3校目。


翌日の…4校目。





「Honey Beeの皆さん、ありがとうございましたーっ！」





大きな声援を送ってくれる観客の皆さんに、手を振れるくらいに余裕が出て。

4校目の大学の学園祭なんかは、一般の方にも見に来ていただけた。



………次。


あっという間に………俺らの2日間を締めくくる、最後のステージが、次。




そしてそこは……俺の、トラウマの場所。






秀「時間押してるんで車飛ばします！……今の調子で、最後まで突っ走ってね！」

大「任せろーっ！」



車の中で元気に片手をあげる大ちゃん。

それを笑う裕翔と雄也。


……俺を見る、薮ちゃん。




全部がいつも通りなのに。
俺だけが、いつも通りじゃない。




……俺の心臓は、初日なんて比にならないくらい…うるさく動いていた。

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