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誰かに、何か言われちゃったのかな。
それとも、羨ましくなっちゃったのかな。
涼介の腕の中から見えた大貴は、ほんの少し目を潤めて…寂しそうに、顔を歪めていた。
何か言ってやるべきか……悩んだけど、ここは口を挟まず、俺は洗濯物にまた手をつける。
大「まま、だいちゃんのことがきらいなの?だからだいちゃんには、ままがいないの?」
涼「っ、ちがう、そんなことない」
切なげな大貴の言葉に、涼介は珍しく少しだけ声を大きくした。
………涼介の目も………どことなく、潤んでいるような気がする。
これはきっと、熱のせいではない。
涼「…ママは……もう、会えないんだ。会えないくらい、遠い遠いところに行っちゃったの」
……涼介だってそりゃ、寂しいだろう。
思い出しても、悔やまれる。
まだ産まれたばかりの大貴と、病気がちな涼介。
そんな2人を支えるために働きに出ていた、涼介の奥さんは……働きもしない飲んだくれの男に、車でひかれた。
最期まで抱きしめていたのは、大貴が生まれてすぐ病室で撮った、最初で最後の3人の家族写真だった。
涼「でもね……?ママは大貴のこと、大好きだったよ。世界で1番、ママは大貴を愛してた。……ううん…きっと、今でも愛してる」
大「ほんと……?」
慧「……大貴、パパが嘘ついたことないだろ?」
俺は…たまにあるかもしれないけどさ。
涼介は子供にだって素直で正直で、嘘なんかつけやしないんだから。
そう言えば、小さく、しょんぼりしながらもこくりと頷く大貴。
…………あ、そうだ。
慧「そういえば……大貴が生まれてすぐのビデオ、とってあるはずだよ。そこにママも映ってるんじゃないかな」
大「え…っ…ほんとっ!?みたい!!」
慧「そこの棚、探してごらん」
本当はね。
彼女、隠していたかったみたいなんだけど。
大貴はきっと、母親からの愛情を確かめたいんだろうなと思うから。
それは見せるのが1番早いかなと思うんだ。
大きく頷いた大貴は、涼介の膝から飛び降りて戸棚の方へと走っていく。
………それを涼介は……キョトンとしたように、目で追って。
我に返ったように、俺を見つめた。
涼「ぇ……ねぇ…俺、しらない…」
慧「口止めされてたからね。笑」
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楠木りずむ(プロフ) - 山田さん» わー嬉しいです!私も、この後倒れないかなぁと思っていて…(←)こちらこそ読んでくださりありがとうございます!! (2022年4月17日 23時) (レス) id: cd22ea486d (このIDを非表示/違反報告)
山田(プロフ) - 最高です!実はこの後風邪ひかないかなぁとか思ってたので笑まさか書いてくださるとは!ありがとうございます! (2022年4月17日 22時) (レス) @page24 id: 540a0b00e3 (このIDを非表示/違反報告)
楠木りずむ(プロフ) - @saku_raさん» お返事遅れてすみません汗 すみません、リクエストは受け付けてないんです……(><)申し訳ないです!でもコメント、本当に嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年3月29日 20時) (レス) id: cd22ea486d (このIDを非表示/違反報告)
@saku_ra - おねむ、私も大好きです!また書いていただけますか?次書く時は眠くて少し幼くなってしまってみんなメロメロになる話がいいです!お願いします!投稿頑張ってください! (2022年3月26日 11時) (レス) @page12 id: b6ea1c7687 (このIDを非表示/違反報告)
楠木りずむ(プロフ) - kainさん» 嬉しいです…!!ありがとうございます!(*´∀︎`*) (2022年3月4日 7時) (レス) @page12 id: cd22ea486d (このIDを非表示/違反報告)
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