そこに耳をあてたとき 〈2〉

・ ページ30

涼介side



涼「正解は緑の扉です…！」

か「なんでぇ？」

涼「なっ……なんで………んー…」



……なんでと言われると、難しい。

話したところで信じてもらえることなんて、ほとんど無いから。


けど……



光「……話しなよ」

涼「え………」

光「…こんな状況で嘘つく奴なんかいないって、みんな分かってる。あの時だって………あんな状態だったからか、後で説明された涼介くんの耳のこと、結構すんなり受け入れたんだ」




……そっか……

前に拉致された時も俺…………何も言わず耳を使い始めたけど、皆は分かったっけ……



だから案外大丈夫だよ、と言う光くんに、こくんと頷いた。

確かに……ここで、そんなつまらない嘘を言っても仕方ない。

この状況だからこそ、分かっていて欲しい。



涼「……俺の耳ね。その物が出会った過去の音を、聞くことが出来るんだ」







.








分かりやすく説明するのには、結構時間がかかったけど。

幸平さんが過去に話した会話や、明日香さんの身に起こった過去の事を当てれば、みんなが信じてくれて……




俺の耳を信用して、緑の部屋を選ぶことになった。






婆「……坊や、君は私と行こうかの」


……みんなが覚悟を決めたような表情の中………そうかっちゃんに言ったのは、お婆さん。

幸平さんの肩をポンポン叩いて背中から降り、よたよたとした足取りでかっちゃんに近づいていく。




幸「えっ、大丈夫かよ婆さん…」

婆「…扉の先のクイズは小学生レベル。この子には無理じゃ。私が1人で2問解くんじゃよ」

ゆ「それって…ルール的に平気なんですか…？」

婆「わからんから私が行くんじゃ。もし死んでしもうても、私にゃ残り少しの余生しかないからのぅ……意地でもかっちゃんだけは生きて帰すから、心配しなさんな」




……そんな、無茶な………


皆が何も言えずお婆さんを見つめれば……おもむろにかっちゃんと手を繋いだお婆さんは、しわくちゃの顔でにっこりと笑って。



婆「だいじょおぶだいじょおぶ。任せんさい」




優しく、かつ力強くそう言うもんだから。





明「……お願いします」

光「気をつけて」

涼「かっちゃん……頼みます」



俺たちは、そう言う他なかった。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す