養護施設 “輝希” ー2ndー

廃墟ビル ページ28

大貴side



大「どこだよ……お前らどこにいんだよ！！」

『まぁまぁ落ち着けって！今から言うからさぁ』


焦る気持ちばかりが募って、呑気に笑うコイツに心からムカついた。


『……場所は○○ビル。都内にある廃墟ビルだ。…多分そこにもうすぐ警察は来るんだろうが……そいつらが来る前に家を出てこっちに来いよ。制限時間は10分だ』

す『警察とコンタクトをとった瞬間殺す、時間に遅れても殺す。……もちろん脅しじゃないわよ？殺し屋なんだから』


なんで、笑ってられんだよ…………


慧「………お前たちの目的は何……？」


す『それは会ってからのお楽しみ。10分以内に会えることを楽しみにしてるわ？

…………よーい…ドン♪』



……ぷちっと、映像が途切れる。


クソッ…なんなんだよこれっ……！


圭人と侑李の大泣きしてる姿と、裕翔のアイツらを睨む姿。

そして……涼介の、泣きながら謝る姿を思い出す。


あんな風に泣かせるなんて、許せねぇ………


雄「薮くん」

宏「……青山さんには申し訳ねぇけど、仕方ない……行こう」


ここにはきっと、無数の盗聴器が仕掛けられているはず。

電話をすることも、置き手紙を置いておくことも出来なくて。


心の中で青山さんに謝りながら、俺たちは急いで車に乗り込んだ。






雄「…………ついた、ここだ…」



…………車の中は、さっきよりも緊張感で張りつめていた。

そんな中でゆっくり止まった場所は……もう使われていない、人気のない廃墟ビル。


ここに、子供たちが…………


そう考えると、すぐにでも走り出したくなった。


宏「………皆」

それでも。


俺たちが車から飛び出さなかったのは………薮くんが、動かなかったから。



静かな車内の中で、後部座席の右側に座っていた薮くんに、視線が注がれた。

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