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涼介side
「…せ………せん……………先生！」
涼「………っ……ん……有岡くん……？」
大「先生？大丈夫ですか？」
視界と聴覚がクリアになって、有岡くんの顔が目の前に見えた。
…不思議だ……病院に来て診察してからの記憶がない。
涼「………ぁ…」
周りをキョロキョロと見渡してみれば目に入ったのは自分の腕で。
自分の腕から出ている細い管のようなものを視線で追うと、そこには点滴パックがついていた。
途端に、鋭利な針が刺さっているであろう自分から顔を背ける。
涼「取ってください。これ、やだ……取って」
大「あー、無理矢理取ろうとしないでください！もうすぐ診察してくれた先生来ますから」
…………不快だ。すごく不快だ。
苦手なものが、たった今、自分の腕に刺さっているだなんて。
このまま抜けなかったらどうするんだ。このままどんどん奥に刺さったりしたら………
涼「っ、取って、早く取りたいですっ…」
「お、山田さん起きた？今点滴取りますね」
あり得ない被害妄想を自分自身で膨らませ、有岡くんにそう訴えていると……タイミングよく先生の声。
丁寧に処置をされ、ようやくホッとした。
………どうも、針は苦手だ。
別にトラウマとか、そう言うのがあるわけではない。
ただ、鋭利なものを見ると、最悪の展開を思い浮かべて恐怖に支配されるのだ。
大「先生……」
涼「…ん？」
困ったように声をかけてくる有岡くん。
彼がこんな顔をするのは、ちょっと珍しい。
大「もう…雨待ちなんてしないでくださいね？」
そう言う有岡くんを見て、思い出した。
そうだ、元はと言えば昨日ベランダで雨を待って、見事にどしゃ降りに打たれてこうなったんだっけ。
涼「…雨待ち、無意味になっちゃったなぁ」
大「…………は！？」
お粥とりんご、話のキーポイントになるはずだったのに……まさか食欲不振だなんて。
しょうがないから、また別のものにしよう……
先生からは帰っていいといわれたので、「こんな大変なことになったのに……」とぶつくさ文句を言う有岡くんとともに病院を出る。
動いて思い出したけど、そういえばさっきまで苦しめられた症状がいつのまにか消えてた。
点滴は嫌いだけど…すごい。
大「どうですか？体は」
涼「気持ち悪い」
大「え！？」
涼「冗談です」
あの心地いい薬品の香りが消えて、ちょっと名残惜しいけど。
次はどう小説を展開させようか……と考えるだけで、その寂しさは嘘のように消えたのだった。
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ずみ - 完結おめでとうございます。ありやまの新しい関係性と山田さんの儚い個性と一般人とはいえ一般人では無い世界観に、あっという間に吸い込まれました。他の作品も読ませていただきたいと思います。 (2020年12月13日 11時) (
レス) id: 8b98f4e28d (このIDを非表示/違反報告)
楠木りずむ(プロフ) - kanさん» ありがとうございます！気づかなかったですか…！気づいてくれるのも嬉しいし気づかれないのもなんか嬉しいです……！笑 次回作もよろしくお願いします！ (2019年4月5日 10時) (レス) id: 9a431af939 (このIDを非表示/違反報告)
kan(プロフ) - 完結おめでとうございます！今回も楽しく読ませて頂きました^ ^まさかメンバー全員の登場！そして裕翔くんの名前にはカラクリがあったなんて…！？全く気づかずに読んでました笑次回作も楽しみにしてます！ (2019年4月4日 0時) (レス) id: 7f5ec1a8f4 (このIDを非表示/違反報告)
楠木りずむ(プロフ) - 恋した月さん» ありがとうございます！次回作もよろしくお願いします！笑 (2019年4月3日 22時) (レス) id: 9a431af939 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - すっごく面白かったです！ (2019年4月3日 9時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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