赤いアネモネ ページ39
｢なのになんであんな時間までひとりでいんの｣
｢ごめんなさい……｣
こんな筈じゃ無かったのに…。
俯く私を前に、ゾムは、大きくため息を吐いた。
どうしよう
絶対呆れてる…
愛想も尽かされちゃったかも…
鬱先生は、大丈夫って言ってたけど
全然大丈夫じゃない
あれだけ泣いたのに、また涙が溢れてきてポタポタと床に水滴が落ちる。
｢A…｣
名前を呼ばれて、反射的に肩が跳ねた。
｢ぐすっ…｣
｢なんで俺がこんなに怒ってるか分かる？｣
私は、首を横に振る。
鼻を啜って涙を力任せに拭いていると頭と腰に腕が回って、ぎゅっと抱きしめられた。
｢心配だからや｣
少し苦しいくらいに抱きしめる力が強くなった。
ゾムの匂いが私を包み込む。
初めて抱きしめられた…。
｢ちっこいなぁ、A｣
私の頭に頬を寄せてそんなこと言うもんだから頭が追いついていかず、涙は、すっかり止まってしまった。
｢あ、あの、ゾム？｣
｢んー？｣
｢怒ってたんじゃないの？｣
｢まだ怒ってるで｣
｢えっ！｣
それだけでまた体が震え、そんな私の動揺っぷりにゾムがクスクスと笑いだした。
いつもならからかわれるとムッとしていたものだけど今は、この笑い声が落ち着くからずっと聞いていたい。
｢怖がらせたの俺やけど、そんな怯えんで｣
｢…怯えてなんかないもん｣
｢嘘やな｣
｢嘘じゃないもん！｣
ついムキになって答えると、ゾムは、喉の奥で声を押し殺すように笑った。
｢ねぇゾム、私のことまだ子供みたいだと思ってる…？｣
｢Aは、どう思う？｣
｢まだ思ってる気がする…。あと、デートしてくれるって決めたのは、なんで？こうして抱きしめてくれたのってなんで？鬱先生に送ったメールの内容の意味は？全部気まぐれ？｣
全部答えを知りたい。
勘違いしないように口で言って欲しい。
逸る気持ちが次から次へと流れ出る。
｢なんでやと思う？｣
｢もー！なんで質問を質問で返すの！｣
ゾムは、意地悪く笑い私から体を離す。
腹減った〜なんて気の抜けた声でキッチンに行って勝手に冷蔵庫の食材を漁り、まな板や包丁を取り出したりしている。
｢教えてよゾム｣
｢はいはい、あとでな〜｣
そう言うゾムは、まだスーツ姿。
仕事が終わってから真っ先に来てくれたことに気づき、どうしようもなく幸せでいっぱいになってしまう私だった。
ーENDー
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あいまいアイン(プロフ) - 久々に読み返しにきました！何度見てもニヤニヤが止まりません... (4月9日 11時) (
レス) id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ丸(プロフ) - チェリーさん» (ゆ、遺言…だと！？) ありがとうございます！嬉しくて溶けます…！あとお返事遅れて申し訳ない…！！(土下座) (2020年8月30日 18時) (レス) id: 65cc5437ad (このIDを非表示/違反報告)
チェリー - 最高でした(遺言) 可愛さで語彙力溶けましたわ… (2020年3月4日 11時) (レス) id: 8ac09bc0e3 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ丸(プロフ) - mo4さん» う、うれしい…！！ (2019年9月22日 20時) (レス) id: 62bd964a7d (このIDを非表示/違反報告)
mo4 - か、かわいいかよ… (2019年9月21日 19時) (レス) id: c8f50611df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねこ丸 | 作成日時：2019年5月2日 12時
