そして彼に惹かれていった

惹かれる＿21 ページ22

幸せな時間

それは儚く、記憶に残る

邪気のまとう時間

それはくっきりと、存在する

俺の脳内に


「ゼル」


マネージャーヒョンが俺を呼ぶ

深刻そうな顔で、俺を

もう嫌な予感しかしない


「お前への手紙、もう何枚目だろうか」


鮮血で書かれたその文字は、俺への愛

そのはずなのに、酷く汚れているように見えた


「この人、絶対貧血だ」


乾いた笑いが溢れる

きっとこの人は病んでいる

そんなことわかってる

けど、認めたくない

俺のせいだなんて、そんなこと


「HNさん、そろそろ本番のご準備を」

「はい」


ステージの本番前のアクシデント、なんていう普通ならコンディションが落ちるところ

俺も実際落ちてた

でも、漫画や小説みたいにはいかない

落ちて、ステージでパフォーマンスして、仲間が気づいて助けてくれて、解決

落ちて、本番前に元気付けられて、パフォーマンス成功、そして解決する


「どれも俺にはありません、そんなこと

だって俺、ひとりですから」

「ゼル」


大丈夫、俺がいる、なんて言って抱きしめてくれるマネージャーヒョンは本当にいい人だ

実際守ってくれてるし、解決案だって出してくれている

それでも助からない俺は、やはり自分でたちきらなければいけないようだ

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