戦う理由ができたから ページ9
流れる血を見ないフリして私はショッピさんに肩を貸す。本当に女は鬼ごっこを実践するらしく嬉しそうに数を数えていた。声も随分と小さくなり、施設の倉庫へと身を隠す。ショッピさんの準備してくれた包帯で傷口を縛り止血するがあまりの痛みに汗が止まらない。しかし隣の彼を見ると自分の痛みなんてちっぽけなものだと思えてしまう。
「…ショッピさん、大丈夫ですか？」
「……すまん…ホンマ…、俺が隊長なのに」
「いえ。私なら大丈夫ですよ」
ショッピさんは少しずつ落ち着いてきたみたいだ。どうしたのか聞くべきか迷っていると彼が小さく話し始める。
「…Aは、この世界がどんな世界かまだ知らんのやろ？」
「えぇ。知らないです」
「この世の中では異能持ちは迫害されとる」
「迫害…」
「俺とコネシマさんはこの世界の中でも最も差別主義の国出身なんや」
彼の呼吸が正しくなった。しかし表情は硬いままだ。
「俺の目…紫やろ？」
「…はい」
「紫の瞳はこの世で一番珍しいとされとる。だからか、紫の瞳も持つものは異能持ちの証拠だと言われてな。桃色の瞳も確か同じぐらい珍しいがそれと同等の希少価値なんや」
「それって…。異能持ちでなくとも紫の瞳も持つショッピさんは？」
「想像の通りやで。俺は生まれたその時から両親に見捨てられ"ある施設"に連れてこられた。」
「し、せつ…？」
嫌な予感がする。
「ここと似た、いや…場所が違うだけで同じ施設。異能持ちを迫害しとるのに異能の実験なんて矛盾しとるやろ？やけどそれが人間や」
乾いた声で笑うショッピさんは泣いているみたいだった。
「俺は毎日死んだ方がマシって思うぐらい…あいつらの玩具にされとった。異能も持ってないのに。ただ、あいつらは拷問するのが楽しいんや。気が狂っとる…。その施設の責任者の息子がコネシマさんでな。
コネシマさんはボロ雑巾みたいな俺を、名前で呼んでくれた。他に助けてくれるわけでもなかったけど、俺の紫の瞳を真っ直ぐ見て、名前をつけてくれたんや…。
コネシマさんは綺麗なブルーアイ。それは一般的な瞳ではあるけど俺らの国では王族の血を現す瞳の色や。そんなコネシマさんが憎くて、でも、俺の存在を認めてくれた唯一やった」
はあ、と溜息を落として煙草に火をつけるショッピさん。
「功利主義で利口的なあの人やけど、誰の為でもない自分の為やと言ってあの人は迫害の対象となる異能を使った。」
それは明らかに俺のためだったと、彼は言葉を溢した。
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鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…！最後までご愛読ありがとうございました！ (2021年2月20日 16時) (
レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…！とても素敵な話でした！ (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん！以前もコメントして下さいましたよね？本当ありがとうございます…！良かったら番外編でもよろしくお願いします…！最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました！ (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます！貴方の作品に出会えて本当に良かったです！ (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます！本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください！すごく励みになります…！今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します！ (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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