戦争は目前 ページ28
「Aちゃんも落ち着いたみたいやし、話に戻そか」
大先生が厳格な会議には似つかない優しい声で皆を諭す。大先生と目が合えば彼は安心させるように微笑んだ。
「せやな。時間の無駄や。」
「チーノさんの報告の中に異能が効かないってあったけどそれってどういうことっすか?A以外にそんなこと出来る奴がいるんすか?」
「そのままの意味や。隊長を完全に捉えとったんや」
「異能を使っていないという訳ではないんだな?」
「はい。隊長の顔も焦っていました。敵は一人、180程の背丈で赤色の髪を持つ大柄な男です。…赤と紫のオッドアイが印象的でした」
「なるほど…。異能の効かない男か…。」
異能が効かない?それは私と同じ物なのだろうか。
「隊長は異能がなくとも近接攻撃は軍随一です。しかし、敵はそれ以上の能力をもっているようでした」
「嘘やろ?」
「実力者か」
その言葉に反応したのは前線組だ。
「グルさん、どうするんや」
「以前に基地に侵入されたことを考えると、異能が効かないという話は納得がいく。」
「いくら俺がオフやからと言っても何も見えんかったのはおかしいもんな」
ロボロさんが悔しそうに吐き捨てた。
「それか、裏切り者がおるとか?」
会議室に静寂が訪れた。
「大先生、それはないで。だって俺がおるやん」
静寂の中声を上げたのは両手を頰に当てたオスマンさんだ。ニコニコと笑う彼は話を続ける。
「裏切りがあると懸念するなら俺が全員の頭の中を覗いたるから安心してな。それに…俺の異能を知らん幹部はおらんはずやから、裏切ってたら相当の馬鹿やで」
「せ、せやな…マンちゃんの能力忘れとったわ」
「忘れないでほしいめう〜!」
「オスマン、エーミール、鬱、ロボロ。お前達は引き続き情報収集を続けろ。その他は今後の任務はツーマンセルで行動するようにする。」
「隊ごとか?」
「いや、任務ごとにこちらで決める。能力の相性と異能が効かなかった場合の戦闘能力だな」
「「了解」」
幹部の声が揃った。その瞬間、会議室にあったプロジェクターの電源がつく。
『グルッペン・フューラーと幹部の皆様。こんばんは。ご挨拶に参りました。自己紹介がまだでしたね。私は、ケーニヒと申します。うちの幹部はどうですか?異能なんて必要ないと証明できたでしょうか?
そろそろこんな茶番はやめて、戦争を始めましょう?』
画面上に映る男の瞳は弧を描く。以前私を誘拐し、暴力を振るった男だ。間違いない。…もう、戦争は目前だ。
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鳩山(プロフ) - えみさん» コメントありがとうございます。懸命に生きる2人と彼らの話を素敵と言っていただき本当に光栄です…!最後までご愛読ありがとうございました! (2021年2月20日 16時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
えみ - rbr推しですがshaちゃんとくっついて欲しいと思ってしまう程の作者様の文才に引き込まれました…!とても素敵な話でした! (2021年2月19日 17時) (レス) id: 1597543406 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ブンブンさん» ブンブンさん!以前もコメントして下さいましたよね?本当ありがとうございます…!良かったら番外編でもよろしくお願いします…!最高に嬉しい言葉を本当にありがとうございました! (2019年11月11日 0時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ブンブン(プロフ) - 完結おめでとうございます!貴方の作品に出会えて本当に良かったです! (2019年11月10日 23時) (レス) id: 4a511d68cf (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - kogarashi343gooさん» コメントありがとうございます!本当に嬉しいお言葉ばかりで私からも感謝させてください!すごく励みになります…!今後は番外編然り、別作品然り、更新頑張っていくつもりですので今後ともよろしくお願い致します! (2019年11月10日 22時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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